死体が朽ちていく様子を九段階に分けて描いた仏教絵画「九相図」 (1/2ページ)
仏教美術の一つに、いずれは死にゆく身体の不浄を受け入れるために死を描いた「九相図(くそうず)」と言われる絵画が存在する。九相図とは何か、そして現存する九相図をいくつか紹介する。
■死をイメージする「九相(想)観」
仏教用語に観相(想)【かんそう】という言葉がある。そのものの真の姿をとらえようと思いを凝らす、その姿や性質を観察することであり、瞑想や黙想を行う。そして「九相観」とは、肉体への執着を取り除くために、死や肉体は不浄なものであると考え、死体が腐敗し骨になっていく様子を9つの段階に分けて観相するというものである。肉体への執着を持つことは悟りの妨げと考えられており、その九相観を行うために描かれた絵画が九相図である。
■「九相図」に描かれている死の九つの段階
摩訶止観という仏教の論書によると九相図には、人が亡くなって腐敗し、骨となりやがてすべてなくなってしまう様子が以下の9つの段階にわけて描かれている。
(1)屍が腐敗により発生した膨脹する「脹相(ちょうそう)」
(2)屍の皮や肉がはがれ破壊されていく「壊相(えそう)」
(3)破壊された肉体から血があふれ出る「血塗相(けちずそう)」
(4)膿爛し肉が溶けて流れる「膿爛相(のうらんそう)」
(5)残りの皮や肉が風に吹かれ太陽にさらされ変色する「青瘀相(しょうおそう)」
(6)鳥獣が屍をついばむ「噉相(たんそう)」
(7)鳥獣に食われて筋骨頭手足がばらばらになる「散相(さんそう)」
(8)血肉がなくなり白骨だけになる「骨相(こつそう)」
(9)白骨が火に焼かれて灰や土に帰する「焼相(しょうそう)」
時代によっては、最初に臨終の様子が描かれているものや、石碑や墓の様子が最後に描かれているものも存在する。そして特徴的であるのが、九相図に描かれるのは女性であることが多いということである、これは、煩悩=色欲と捉えており、美しい女性が醜い姿に変化していく図を見ることで、修行僧の煩悩を退ける効果があるのである。現在も保存されている「九相図」の紹介をまとめた。