緩和ケアやグリーフケアの現場で近年注目を集めている臨床宗教師とは (2/3ページ)
■ケアの援助者 臨床宗教師
医療や福祉が向き合うのは、死の苦痛、死別の悲嘆に肉体的、社会的、精神的なケア領域である。人間にはさらにスピリチュアル・ペインが存在する。「なぜ自分がこんな目にあうのか」「自分はなんのために生まれてきたのか」、限界状況に追い込まれた人間の苦悩に対するケアが必要となる。それは医療、福祉の及ばない領域であり、この世ならざる価値観を提供できる僧侶、神職、牧師(神父)ら宗教者が心のケアにあたる臨床宗教師の役割が注目されている。
臨床宗教師は東日本大震災を契機として、2012年東北大学大学院文学研究科に「実践宗教学寄附講座」が設置され臨床宗教師の養成が開始された。その後一般社団法人の認可を受け、資格認定制度が始まった。現在では東北大学以外にも、龍谷大学、武蔵野大学、上智大学などに養成機関が設置されている。震災以前にも仏教系のビハーラ僧、欧米では医療機関に定着しているキリスト教系のチャプレンなどの活動が行われており現在でも継続しているが、患者側の宗教に対する複雑な感情や経済的基盤などの問題もあり、全国的な広がりには至らず臨床宗教師の今後の展開は興味深い。
■臨床宗教師の課題
臨床宗教師は主としてホスピスや病院の緩和ケアの現場などに赴くわけだが、宗教師自身と患者の信仰、宗教観と一致することは少なく、特定の宗派、信仰、教義を説かず患者に寄り添うことが求められる。その一方で宗教師が属している特定の宗教教義を放棄した場合、それは「宗教師」といえるのだろうか。信仰を押しつけない態度は立派ではあるが宗教の意味はあるのか。従来の臨床心理士やカウンセラーでよいのではないか。政教分離の壁もあり、同時に信教の自由も保証されている。こうした点については今後の議論が必要だろう。
また特定の宗教活動に対する抑止にもつながると思われる。宗教者が医療や福祉の現場に布教の手段として近づく事は多い。事件、事故の被害者関係者に宗教団体が心の救いや癒やし、果ては事件の解決(信心すれば行方不明の家族が帰ってくるなど)までも確約して、多額の金銭を要求することも珍しくない。心のケアどころか魂の殺人ともいえる所業とである。この側面における対策という面でも臨床宗教師の認定は大きな意義がある。