輪廻転生は東洋と西洋でそれぞれどのように捉えられているか (2/3ページ)

心に残る家族葬

我も世界の実体もが無いのに何がどう輪廻するのかという疑問が生じ、現代に至るまで無我説と輪廻説の論争は絶えることがない。それでもブッダが輪廻を説いたこと、生まれ変わることこそが苦の原因であると説いたこと自体は事実である。その転生観にポジティブもロマンチシズムもまったく存在しない。

■霊的進化論としての輪廻転生

西洋にも輪廻転生観は存在する。古代ギリシャの大数学者にして哲学者ピタゴラス(582〜496)と、彼の組織した教団が輪廻転生を説いたことはよく知られている。その後、転生を否定するキリスト教が西洋世界を支配した。キリスト教の教義は人間は死後、最後の審判で裁きを受けその結果、天国なり地獄へ行くことになっている。中世にキリスト教の一派、カタリ派が輪廻転生を説いたとされるが異端として迫害された。またキリスト教の地下水脈のように受け継がれてきたグノーシス派も転生の教えを含んでいる。
近代に入り輪廻を魂の成長と見る霊的進化論の流れが誕生する。ヘレン・P・ブラヴァツキー(1831〜91)の創始した神智学。神智学から分かれより思想を深めていったルドルフ・シュタイナー(1861〜1925)の人智学などの近代西洋神秘思想では、人間の魂は転生を繰り返しながら霊的に進化していくと説いた。さらに人間の霊的進化は宇宙の進化とも対応しているとするなどの壮大な思想が展開された。これは仏教が説く苦としての輪廻転生とは真逆の、上昇する未来へのストーリーである。霊的進化としての輪廻転生観に進化論の影響が強いのは当然だが、進化論からして宿敵であるはずのキリスト教がその背景にあったと思われる。キリスト教の教義は天にまします絶対的存在「神」を仰ぎ、魂の天国行きをを目指す上昇の思想である。西洋思想はこの上昇の思想が根底にあり、輪廻転生の意味も仏教的な延々と巡り巡る円環の思想とは違う魂の進化論として確立していったのである。

仏教国であり、本来儚さを好む日本人は円環する輪廻転生観を受け入れていたはずだが、現代の生まれ変わりに対するロマンチシズムは西洋的な上昇思想の影響によるものだと思われる。


■真理はひとつ?

東西の輪廻転生観の違いを概観したが、突き詰めれば仏教の解脱も西洋の霊的進化と同じ意味に思える。

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