異教を認めない多様性皆無の宗教が多い中で異教徒にも寛容なシク教 (2/3ページ)
イスラム教があるのでもない」と言い、神の前に万人は平等であるとしてヒンドゥー教とイスラム教の要素を統合した教えを展開した。万人平等の思想からカースト制度は否定され、異教徒に極めて寛容な宗教である。
■シク教の教義と宗教多元主義
シク教は一神教であり偶像崇拝を禁じているが、一方で輪廻転生も認めている。神は姿も形もなく属性も特徴もない。人間はそのような神への信愛を絶やすことなく抱き続けることで、死後は輪廻転生を繰り返し、その果てに神との合一を果たすことができると説く。一神教・偶像崇拝と輪廻転生が同居する教義は、イスラムとヒンドゥーの統合を感じさせる。また、神との合一という思想はシク教のイスラム的要素でも、特にイスラム神秘主義「スーフィズム」の色合いが強いといえる。さらにシク教は異教に寛容である。いかなる宗教の神も唯一絶対の神に含まれるとするからである。ここにはあらゆる異端を排斥せず、吸収調和して成立したヒンドゥー教の多元主義的な要素が見られる。シク教はヒンドゥーの多元的要素にイスラムの一神教、偶像禁止、スーフィズムの神秘主義が加味された総合的多元的宗教といえるだろう。
こうしたシク教の特色を概観すると、宗教多元主義を実現した具体的なモデルとして見ることができる。ジョン・ヒックは自著に「神は多くの名前をもつ」というタイトルを付けたが、シク教は一神教といってもアッラーのような固有名詞がなく、神を表す言葉は数十に及ぶという。シク教の聖典「グル・グラント・サーヒブ」にはイスラムの神もヒンドゥーの神も、同じ神の違った姿であると説いている。シク教は宗教多元思想を実現している宗教であるともいえる。
■黄金寺院とランガル
万人は平等であるからカースト制度は否定される。いかなる階層・職業も平等の価値があり格差は無い。シク教はその多元主義的な教義から万人救済の一助を実践している。
アムリトサルで一際目を引くのが黄金色に輝くシーク教の総本山・黄金寺院(ゴールデンテンプル)である。誰でも自由に参拝でき、周辺はバザールなどで賑わっている。特筆すべきは無料食堂「グル・カ・ランガル」(共同食堂)である。5000人を収容できる巨大食堂で1日10万人分の食事が無料で提供されている。