異教を認めない多様性皆無の宗教が多い中で異教徒にも寛容なシク教 (3/3ページ)
ここでは宗教、人種、地位、年齢、性別…など全く関係なく、いつでも温かい食事が食べられる。人と人を分かつものはない。300人の調理人は全員がボランティアだ。約500年続いている。
ランガルはグル・ナーナクがカースト制度を批判する意味を込めて、礼拝後に身分を超えて同じ部屋で、同じ食事をとる制度として確立したとされる。黄金寺院だけでなくすべてのシク教寺院には共同厨房・食堂が設置されており無料食堂が行なわれている。多元宗教・シク教がその教えを実践に移した象徴といえるだろう。
■真の多様性とは
シク教の一神教・輪廻転生・神秘主義の統合は21世紀の死生観の構築において興味深い。そしてそれらの教義が、人間を上下優劣敵味方に区別する壁を壊し、生きる上で最も根本的な「食」を提供する慈悲行を生み出した事実は、シク教が単なる折衷宗教でないことを示している。多様性と言いながらその実、自分たちと異なる考えを排除しようとする人のなんと多いことか。対立する者の考えを理解しようとはせず、お互いが正義の旗を振りながら敵を滅ぼそうとしている。これでは一歩も進まない。シク教の多元主義的な要素と実践は大いに学ぶべきものがある。
■参考資料
■ジョン・ヒック著/間瀬啓允訳「神は多くの名前をもつ」岩波書店(1990)
■クシティ・モーハン・セーン著/中川正生訳「ヒンドゥー教」講談社(1999)
■「世界の宗教と経典」自由国民社(1996)
■保坂俊司「シク教の神の概念についての一考察――SacuとHukamuを中心として――」『比較思想』第13号 比較思想学会(1986)
■映画「聖者たちの食卓」公式サイト(ランガルの様子を描いたドキュメンタリー映画。子供から老人までが同じ場所で同じ飯を食べる日常が余計な演出もなく淡々と描かれている。)が