「荘園」は大規模な脱税システムだった!?平安貴族はいかにして私腹を肥やしたのか (3/4ページ)
こうして、ますます国の財政は悪化していきます。
ここでもうひとつの動きがありました。国の財政悪化に伴い治安も悪化していったのです。当時の日本では今で言う警察組織が廃止されており、取り締まりができなくなっていたのでした。
そこで登場したのが「武士」です。治安の悪化によって荘園をめぐる係争が次第に頻発する中、貴族たちは腕っぷしの強い人間を雇って武装化し、自身の荘園を守ろうとしたのです。この警備役こそが「武士」の起源です。
荘園システムの崩壊から「領土願望」へ貴族が私腹を肥やし、国の治安が悪化したので武士を雇って武装する。これは当然の流れで、これでめでたしめでたしとなりそうです。しかしそうもいきません。武士は武士で、「自分たちも土地が欲しい」という気持ちを持っていました。
なぜなら、武士はもともとは土地の管理者たちなのですが、自分の貴重な財産であるはずの土地を貴族に預けている以上は、収入が不安定なままなのです。彼ら武士たちは、本当は純粋な私有地が欲しいわけです。
そこで、武士は次第に武力をもって荘園の実効支配に乗り出します。軍事力を持たない貴族はその実効支配になすすべもなく、荘園からの収入は次第に減少します。
そこで貴族は武士と主従関係を結び、荘園支配を彼らに任せる代わりに一定の収入を自身に渡す「下地中分」というやり方を採用します。