福岡市東区にあるニワトリを祀る香椎宮の鶏石神社を調べてみた (4/5ページ)

心に残る家族葬

麦は燃え上がる松明の火のようで、足の踏み場もないほどだった。

青年は「熱い!熱い!」と畑の中で泣き叫んでいた。その声を聞いた村人が、青年を捕まえようとしたが、暴れて手がつけられない。やっとのことで捕まえ、村人は青年を麦畑の囲いの外に引っ張り出した。青年は気を失ったまま、

地面に臥していた。しばらくして意識を取り戻した青年曰く、あたり一面火の海で、逃げ出すことができず、苦しかった。足を焼かれ、その痛さは、熱湯の中で煮込まれているかのようだった、と。村人が青年の袴のすそをめくり上

げると、ふくらはぎの肉がただれて溶けており、骨が鎖のようにつながっているのが露出していた。それから1日経って、青年は亡くなった…。

■ニワトリの卵を食べるなど言語道断とされていた

『日本霊異記』は仏教説話集であることから、ニワトリの卵を煮て食べるなど、「邪見(じゃけん)」な青年の振る舞いと、それによって受けた罰を示し、因果応報を信じなければならないと強調する。カラスが自分の子を慈しむあまり、他の鳥の子を食べるが、そのようなことをしてはならない。慈悲の心のない者は、カラスと同じである。『涅槃経』(4世紀頃成立)に、「人と獣の違いの中に、貴賤の差があるが、命を大切にし、死を重視することは、人も鳥獣も変わりはない」とあり、『善悪因果経』(6世紀成立)に、「この世でニワトリの卵を焼いたり煮たりする者は、死んで灰河(けが)地獄(熱灰が流れているとされる)に堕ちる」と述べている、と締めくくっている。

■最後に…

恐らく香椎の浜での一件は、江戸期以前のことだと考えられるため、『日本霊異記』におけるような価値観、すなわち、ニワトリの肉や卵を食べてはならないということは遵守されるべきこと、そして「常識」でもあった。とはいえ仏教が日本に伝わる以前には、ニワトリの卵、すなわち、ニワトリの命をいただいていた人もいたのだから、この度は、ニワトリの命を救って欲しいと村人に請うたのだろう。

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