川上未映子が『春のこわいもの』で書いた逃れられないオブセッション (5/5ページ)

新刊JP

――「娘について」は母娘関係の業のようなものに触れていますが、自分の親ではなく他人の親を書いているのがおもしろいですね。

川上:そうですね、母娘問題についての物語は色々な人がたくさん書いていて、かなりの蓄積があるんです。だから、今書くなら、これまであまりなかったようなねじれや感情や関係を書きたいな、と思いました。

――この作品はラストがこわいです。主人公が友達への負い目を清算するためにとった行動にはどきりとしましたが、人間の本質を見た感じもしました。

川上:自分がしたことについて友達がどこまで知っているのかわからない。ふだんは存在していないのに、思いだそうして初めて、思いだすことのできる事実もあります。人は自分のされたことは覚えているけれど、多くの人は自分のしたことを忘れてしまう。もちろん逆もあります。記憶が、過去が、どんなありかたをしているのか。書くことで迫りたいなって思うけど、いつも「つぎはもっと」という思いが残るばかりです。

(後編に続く)

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