福岡市早良区野芥にある「野芥縁切(えんきり)地蔵尊」を調べてみた (2/5ページ)
それは縁を切りたい相手に、お地蔵さまそのものを削った粉、またはお地蔵さまのお顔に化粧を施し、おしろいが乾いた頃合いを見計らって、それをこそぎ取って持ち帰り、こっそり飲ませることで「縁切りが叶う」という俗信があったためである。そこで、令和の今に至っても、堂内にあふれる絵馬や手紙に込められた、男女の離縁離婚問題のみならず、病気やギャンブル依存症などの「悪縁」を断ち切りたい多くの善男善女が福岡県内にとどまらず、北海道から沖縄に至る全国各地から訪れ、お地蔵様の御利益にすがっている。
■縁切りや離縁、絶縁と信仰の歴史
野芥縁切地蔵尊のような「縁切り」に功徳があるとされる神社や寺院での祈願行為、または嫁入り行列では、「離縁」「絶縁」を恐れ、その前を決して通ってはならない、といった禁忌や忌避行為の伝承は、日本各地に多く見られる。また、そのような神社や寺院などが建てられている「場所」の多くは、「縁切り」のエピソードよりもはるか以前から伝わる、何らかの「境界地点」に結びついて語られてきた。例えば京都・宇治(うじ)の、「橋の守り神」または嫉妬心が強い「鬼女」としても知られる橋姫(はしひめ)や、外敵の侵入を防ぐとされる塞の神(さいのかみ)などの「強い神」が、外敵または、疫病などの災厄から村を守るために、その境界地点に祀られてきたという。
■野芥縁切地蔵尊の近くにある野芥櫛田(くしだ)神社の歴史
野芥縁切地蔵尊の近くには、野芥櫛田(くしだ)神社がある。『筑前國續風土記拾遺』(1854年頃)編纂当時には「櫛田社」の説明の中に、「鳴神天神一社」「雷天神」「觀音堂」と並び、「御子殿地蔵堂」として、「村南に在。里民縁切地蔵と云」の記述があり、神社と関わりが深い地蔵堂だったことがわかる。
「櫛田神社」といえば、福岡市博多区上川端町(かみかわばたまち)に所在し、毎年7月に開催される「博多祇園山笠」で有名な神社だが、野芥櫛田神社は博多の櫛田神社の元宮という説もあるという。