福岡市早良区野芥にある「野芥縁切(えんきり)地蔵尊」を調べてみた (4/5ページ)
そして動かなくなることだ。これは擬死(ぎし)行動、つまり死んだふりをするのだ。
■最後に・・・
昭和10(1935)年、『九州日報』のコラム「信心と伝説」で野芥縁切地蔵を調査・執筆した医師・森直郷は、「姫の破恋から縁切り地蔵としての俗信が生まれたのだらうが、自分の貞節心をはき違へた信者どもに、泉下の姫は柳眉を逆(さかだ)てて怒つて居るだらう事を、地蔵尊のために附記したい」と、厳しい言葉でしめくくっている。「貞女、二夫に見えず」という価値観が当然だった時代を生きていたがゆえに、人の話を疑わず、素直に信じてしまい、命を絶ったお古能姫だったが、そこでセイブシシバナヘビのように「死んだふり」をして、時が経つのを待つ。そして新たな幸せをつかんで欲しかった。森医師の言葉ではないが、時代や社会が求める「お古能姫」像、すなわち「貞女」「土地の境界を守る神」「男女の縁切りに功徳があるお地蔵さま」ではなく、あくまでも等身大の「お古能姫」として、崇敬の対象であって欲しいものだ。