この世とあの世をつなぐ「食とお供え」の歴史や習わしを紹介 (1/2ページ)

心に残る家族葬

この世とあの世をつなぐ「食とお供え」の歴史や習わしを紹介

神仏に祈りを捧げるとき、死者に思いを馳せるとき、お供えものは付き物である。供物といえば食物を指す場合が多い。私たちが生きていることに感謝するとは、つまりは「食」に感謝することである。「食」はあの世とこの世をつなぐものでもある。

■お供えと共食の歴史

中秋の名月に月見団子をお供えする風習は今も続いている。秋は収穫期。実りの秋の訪れを告げる月に豊作を祈って捧げられるものである。

仏壇や神棚、墓に付き物のお供え。特に仏壇のある家なら毎朝、炊きあがったご飯をもりつけ、仏壇にお供えする。これは宗派の本尊のためというより、あの世にいる家族への毎日の食事という感覚があるだろうと思われる。

古来より地元の神社には収穫物が奉納され祭りが行われた。天地自然は恐るべき災害をもたらし、一方で大いなる恵みを与えてくれる。今年もまた収穫ができたことの報告と感謝。人間の力が及ばない超越的な存在に対する畏れと感謝、畏敬の念の現れ。それが食物をお供えするという行為である。元々神道には「直会」の伝統がある。地元の神職と氏子が祭りや神事の後に、神饌(御饌=みけ)や供物を共に食するのである。そのような神前にお供えした食物には神の力が宿るとされる。筆者の地元では墓参りに一度お供えしたものを食べると風邪をひかなくなるなどと言われたものだ。

毎年行われる宮中祭祀に「新嘗祭」がある。この日は天照大神の子孫たる天皇が神前で五穀豊穣を祈り新穀を食する。特に天皇即位の際に行われる新嘗祭を「大嘗祭」と呼び、儀式では新天皇が神前にて食事をとる「神人共食」を行うとされる。これにより天皇は神の大きな力を得ることになるという。

戦後、新嘗祭は「勤労感謝の日」との呼び名が付き本来の意味とはかけ離れてしまった。その真意は伝わりにくくなったが、新嘗祭は庶民の間でも行われていた。また、近年では簡素化されたが、通夜の晩は一夜を通して飲み食い語り死者を偲んでいた。これは死者との共食といえる。共に同じものを食べることで、あの世とこの世をつなぐのである。神や死者をつなぐのは、やはり生命の根幹である食物でなければならない。

■食物神 豊受大神

皇祖神・天照大神を戴く伊勢神宮には内宮と外宮によって構成されている。

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