人間の生死や禍福を司る神として信仰の対象となった北極星と北斗七星 (2/3ページ)
日本の星神信仰は太陽信仰=天照大神を奉じる大和政権に敗れた非征服民族の信仰形態の名残でもあるのかもしれない。
6世紀頃から中国の道教思想や陰陽思想などが日本に入り込み陰陽道として確立する。陰陽道の核は天文術、つまり星の動きから国や貴人の運命を読み解く技術である。ここから星神信仰が浸透してくるようになった。天皇が元旦に国家安寧、五穀豊穣などを祈る祭祀「四方拝」では北斗七星への祈りが組み込まれている。
伊勢神宮の伊雑宮で行われる御田植神事では高さ9メートルに及ぶ巨大な扇が立てられるが、この扇には「太一」と書かれている。太一は古代中国で北極星が神格化された神名である。太一は北斗七星に乗って宇宙を循環すると言われる。太一は天照大神、北斗七星は神宮外宮の祭神・豊受大神と「神仏習合」を果たして、伊勢の神事に取り込まれたという。なお「淮南子」には太一神を信仰すれば不老不死になれると記されている。そして仏教では北極星・北斗七星は妙見菩薩という仏神となった。
■妙見菩薩
北斗七星は北極星と同一視され仏教に取り入れられて「妙見菩薩」「北辰妙見大菩薩」などと呼ばれ信仰を集めた。現代でも「妙見さん」として庶民からも親しまれている。菩薩という名称だが如来の弟子としての意味はなく仏教の外部から来た神なので本来は「天部」に属する。仏教諸宗派の中でもとりわけ日蓮宗との関係が深い。日蓮の前に妙見菩薩が現れたという伝説もあり、日蓮宗系寺院には妙見堂や妙見宮が祀られている。「能勢の妙見さん」として知られる妙見信仰の聖地「能勢妙見山」も日蓮宗寺院である。日蓮宗との関わり以外にも妙見信仰は日本では数少ない星神信仰の形として膨大かつ複雑な歴史があり、表の太陽信仰に対する裏の信仰形態といえるだろう。
裏といえば邪教とされた天台宗の異端「玄旨帰命壇」では、生命は北斗七星から生まれ北斗七星に帰ると説く。男女が交わると北斗のうちの 2星が下り、胎内で結合してあらゆる生き物になるという。妙見菩薩の神秘的解釈という趣きである。仏教の死生観においても北斗七星は重要な位置を占めているのである。
■星に願いを
都会では稀になってしまったが、満天の星空を見上げると宇宙の広大さや悠久の時を実感する。