献花や供花に用いられた植物の種類や歴史を時代や地域別で分類 (3/3ページ)

心に残る家族葬



更に仏式の葬儀ではお焼香をする。その良い香りや漂う煙の様子も浄土を現し死者の魂の慰みとなるが、お焼香に使われている香木は、白檀(サンダルウッド)、丁子(クローブ)、鬱金(ウコン)などであり、これもまたスパイス、漢方として古くから珍重されてきたものだ。仏教が生まれたインドは酷暑の国。遺体の腐敗臭を消すためにお香は重宝されてきた、ということもあるのだ。

■日本書記に残る弔いの花と香木の記述

ところで、古代日本ではどうだったろうか。日本書紀に、神々の母であるイザナミノミコトは、火の神カグツチノミコトを産んだ際、灼かれて亡くなり、御陵が建てられたとある。それが三重にある花の窟であり、人々は季節の花を供え飾って祀ってきた。国産み、神産みをなした母なる神は季節の花々を愛し、今も国を見守っているとされているのである。

また、同じ日本書紀には、「大きな沈水香木が淡路島に漂着し、島人がかまどに入れて薪とともに燃やしたところ、その煙が遠くまで薫り、不思議なこととしてこの木を朝廷に献上した」といった香木のエピソードもある。仏教伝来が538年。そこから香の文化も同時に日本に広まり始め、インド同様、葬儀でも用いられるようになっていったのだ。

■葬儀の主役、菊の意味と薬効

現代、葬儀で最もよく使われる花といえば菊だろうが、そもそもなぜ菊なのだろう。これには、皇室の紋章が菊だから、とか、日本の国花が菊だから、とか、香りがお香に似ているから、などの理由もあるようだが、真相は不明なようである。しかし、菊が仏花として普及している大きな理由の一つには、花の日持ちが良いという現実的側面もある。急な葬式に準備できる花として重宝されたのである。

また実は、ハーブにも菊科のものは多く、カモミールやエキナセアなどは、古くから薬効が珍重されてきた。中国でも菊は優れた薬効を持つと知られており、故事には菊の花のしずくが落ちた川の水を飲んだ村人が長寿になったという菊水伝説がある。メキシコの死者の日では国中がキク科のマリーゴールドで彩られ飾られることも有名だ。このように、東洋でも西洋でも菊の花には清浄な力が宿っていると信じられてきており、その強い力は邪気を祓うとされた。そして菊にも実は防腐効果もある。お刺身によく菊の花が添えられているが、あれは飾りだけではなく、菊に含まれるグルタチオンという成分に殺菌作用があるからなのだ。

■最後に…

死者が無事にあの世へ行き、死後の世界でも安心して暮らせるようにと、そのような願いを込めて様々な働きを持つ薬草、ハーブが葬儀や弔いの場面で、古今東西使われてきた。植物の持つ力を知恵として知っていた古来から、今なお残るしきたりに、人類の長い歴史とエネルギーを感じた。

人間もまた死後は土に還ってゆく。その命の終わりに美しく香しい花や薬草を手向ける。それは私たちのDNAレベルまで深く刻み込まれた行為なのでは、と思えた。

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