「嫌いなものは嫌いなまま凍結してもいい」津村記久子さんインタビュー(2) (1/4ページ)
母親とその再婚相手への反発から、家を出た18歳の姉と8歳の妹。世捨て人のように生きてきた若い男。
津村記久子さんの新作『水車小屋のネネ』(毎日新聞出版刊)は、さまざまな事情から水車小屋のある街にたどりついた人々が、地元の人々に支えられ、そして自分にできることで恩返しをしながらその土地に根を張り、少しずつ自分の人生を切り拓いていく物語。劇的な変化もなければ、価値観を揺さぶるような出会いもない。しかし、そこには人間にとって必要な心の交流がある。
この物語がいかにして構想され、書き上げられたのか。津村記久子さんにお話をうかがった。今回はその後編をお届けする。
■少しずつの親切で資源を持たない人々が生きていく話にしたかった――作中では章ごとに1981年、1991年、2001年、2011年、2021年と10年おきに登場人物たちの暮らしが描かれています。おもしろかったのは章に西暦が書かれているのに、時事的なトピックが作中にあまり出てきません。意図的に避けていたんですか?
津村:1981年に関しては、私自身も3歳だったので記憶がないんですよね。一方で作中では主人公の理佐が18歳で実家から独立した年でもあります。18歳の女性が8歳の子どもと働きながら暮らしている状態で、世の中のことにはかまってられなかっただろうな、というのがあったので時事的な要素はあまり入っていません。ただ、登場人物が年齢を重ねるにつれて少しずつ世の中の動きに影響を受けていくという流れにはなっています。
――1981年とか1991年あたりは携帯電話もなかったですし、インターネットも普及していなかったので、特に都市から離れたところに暮らす人の生活の所感として時事的なニュースが入ることはあまりなかったのかもしれませんね。こういう小説がニュースを扱う夕刊で連載されたというのもユニークだと思いました。