新たな地質時代「人新世」の到来か?その痕跡がカナダの湖で発見される
[画像を見る]
地球環境の変化は前例のない速さと規模で進行している。その結果、新たな地質時代が到来した可能性があるという。
「人新世」は、人類の活動が地球上の生態系や地質環境に与えた影響に注目したノーベル賞科学者が提案した時代のことだ。
2009年以来、地質学者をはじめとする「人新世実務グループ」は、ある重大な問いに答えるべく入念な調査を行なってきた。
その問いとは、「今から100万年後、もしも宇宙人が地球の大地を調べたとしたら、そこに人類の痕跡がはっきりと残された地層を見つけるだろうか?」というもので、彼らが最近たどり着いた答えは「イエス」だった。
マックス・プランク科学史研究所と共同で開かれた記者会見によれば、カナダ、クロフォード湖の堆積層には、人類が気候や環境に与えた影響がはっきりと残されていたという。
それが意味するのは、最終氷期が終わった1万1700年前から続く「完新世」がついに終了し、次の地質学的時代「人新世」が幕を開けたということだ。
・新しい地質時代「人新世」の痕跡探し
「人新世」とは、オゾン層破壊物質の発見によりノーベル賞を受賞した故パウル・クルッツェンが、2000年に考案した新しい地質時代の名前だ。
誰もが体感している通り、世界は異常なほど暑くなり、地球の生命維持システムは破綻しつつある。
気候変動だけではない。マイクロプラスチック汚染、外来種、核兵器実験による放射性物質の拡散など、人間によるさまざまな活動が「グレート・アクセラレーション(大加速)」と呼ばれる社会経済や地球環境の激変をうながしている。
ここで浮かび上がってくるのが、冒頭に述べた「今から100万年後、もしも宇宙人が地球の大地を調べたとしたら、そこに人類の痕跡がはっきりと残された地層を見つけるだろうか?」の問いだ。
たとえば今から数百万年後に湖沼の堆積物・サンゴ礁・氷床コアといった地質学的な記録を調べたとしたら、その地層の中にここ最近の人間の影響がはっきり残されているだろうか?
もしそうだとしたら、それは新しい地質学的時代「人新世」に入ったということになる。
[画像を見る]
・カナダの湖で「人新世」の痕跡を発見
人新世実務グループはこれをずっと調べていた。
そしてカナダ、クロフォード湖の堆積層でその証拠を見つけ、「国際標準模式層断面及び地点/GSSP」(時代の区切りの印となる場所のこと。千葉にもチバニアンのGSSPがある)として提案したのだ。
トロントから30分ほどの距離にあるこの湖は、小さい割には深いという特徴がある。そのために上部と下部の水がほとんど混ざらない。
この特異な環境のおかげで、湖底の堆積層には木の年輪のように地球の歴史が刻まれている。人新世実務グループは、そこに人類の影響をはっきりと見たのである。
[画像を見る]
温室効果ガスやマイクロプラスチックなど、さまざまな指標が人類が地球環境にあたえる影響を示している / image credit:・地質時代のパラダイムシフトに突入か?
ただし結論はまだ学会全体から受け入れられたわけではない。
これから国際層序委員会(ICS)や国際地質科学連合(IUGS)といった頑固な”お偉方”によって、46億年ある地球の公式年表に記載されるべきか入念に検証されることになる。
だが、関係者のほとんど全員が、受け入れられる可能性は低いと見ているようだ。いずれにせよ、人類の壊滅的な影響について考えさせられることだけは間違いない。
地球がこの宇宙に誕生して以来初めて、たった1種の生き物が、地球の形態・化学・生態系など諸々を根底からくつがえし、しかもそれが自らの手によるものだと自覚したのだ。
これについて、故クルッツェンは、「科学的思考のパラダイムシフトになるかもしれない」と2011年のシンポジウムで語ったという。
今や多くの学者が同意するようになったそのパラダイムシフトとは、これまでの「完新世」が終わり、新しい「人新世」に入ったといことだ。
[画像を見る]
科学者らは人類は地球の生態学的境界を9つまで突破していると主張する ・懐疑派からの反論
すでに述べたように、この見解はまだ学会全体によって受け入れられたわけではない。
たとえば、国際層序委員会のフィル・ギバード事務局長は、昨年ポッドキャスト番組『Geology Bites』で、過去数百万年後繰り返されてきた氷河期のパターンはまだ変わっていないと述べている。
彼によると、その間「ミニ氷河期(小氷期)」が何度も訪れているのだという。そのため、今現在地球の気温が上がっていたとしても、まだこれまでのミニ氷河期から次のミニ氷河期への途中にあるだけかもしれないのだ。
本当のところどうなのか、それを見極めるにはあと5000万年は地球のパターンを観察する必要があるという。
もちろんギバード事務局長も、現在の地球環境の激変についてはわかっている。そこで彼は新しい地質学的時代とするのではなく、ここ最近の出来事を「イベント」と呼んではどうかと提案する。
一方、人新世実務グループを10年以上率いてきたヤン・ザラシェヴィッチ氏は、人新世を正式に承認しなければ、人類文明を支えてくれた完新世の環境や条件が今もなお残っているかのような印象を与えてしまうと述べている。
明らかにそうではありません。”人新世”という言葉が、これからも人によって違う意味にしかならないのだとすれば、その意義は失われ、消えてしまうのではないかと心配しています(ヤン・ザラシェヴィッチ氏)新しい時代が幕を開けたのかどうか、最終的な判決は2024年に出るとのことだ。
References:Welcome to the Anthropocene, Earth's new chapter / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』