「失われた30年」から抜け出すために企業が注目すべき「見えない資産」 (3/4ページ)
知財ミックスを行ううえで企業の持つブランド力はどの程度影響してくるのでしょうか?
鈴木:つまり、昔はモノがあって初めて成立するビジネスが多かったので、研究開発にも膨大な時間がかかりましたし、技術力を磨いて、クオリティを確保して、大量生産の体制を整えてとなると、独自性のあるブランドを短期で確立するのは難しかったわけですが、今は状況が変わっていると思います。
アップルの場合は1980年代に創業した企業で、それなりに歴史があるのですが、Meta(旧Facebook)は2000年代に創業した企業で、ブランド力がないところから急激に台頭しました。テック企業以外でも、たとえば食の世界を見ると、Nestleや味の素のように長い歴史を通じてブランドを作り上げてきた企業がある一方で、インポッシブルフーズのような強力なベンチャーも出てきています。ですから、私は今の時代は昔のように歴史を重ねなければブランド力を築けないとは思いません。
大事なのは会社のビジョンを持って、そこからブレないように知財を活用して新たな事業を興したり、すでにブランド力を持っている会社であればリブランディングを行っていくことだと考えています。それができて初めて会社の世界観に共鳴するコアなファンがついて、安定した収益力も生まれてくる。
――今後日本の企業が知財ミックスを行っていくうえで、必要な人材の種類はどのように変わっていくとお考えですか?
鈴木:私は今、10年後の社会を想像して、バックキャスティング(逆算)によって未来価値を創造できる人材、つまり知財ミックスを進めていける人材を育てるための「BUILD」という人材養成講座に携わっているので、この講座で求められる3つの力についてお話ししましょう。
1つ目は、どういう未来を作りたいのか、日本が世界に対してどんな価値を提供できる国になるべきなのか、といったことを想像して、そこから逆算して今どんな事業や研究開発を行うべきかというテーマを設定する能力です。
2つ目は、自分の想像を起点にして、その想像に説得力を持たせるためのデータを集めて、分析して、自分の説を強化したり検証したりする力です。