断崖絶壁の珍味…!悲しい伝説「吉作落とし」に登場する「岩茸」実際どんな形してるの?
高級食材、岩茸(いわたけ)って知ってる?
登山が趣味の筆者は、あるとき奥多摩の山中の崖に、苔のような黒い物体を見つけました。
きのこというには丸くもない、壁から突き出したように生えている。それはまるでかさぶたの皮がめくれあがっているような形に見えました。
これはまさか、幻の高級食材、岩茸…!!
茸と書くものの一般的なキノコの形はしていません。どちらかというとキクラゲのように見えます。高級な理由は、成長が1年でわずか1mm程度と非常に遅いことで、1kgで1万円以上の値がつくほど!また漢方として利用され、「清心、養胃、止血」の効能があり慢性気管炎に有効との報告もあります。
中国や東アジアで食べられますが、ほぼ無味なので、日本ではゆでて酢の物などにして食べることが多いとか。乾物として流通しているので、塩を少し加えたぬるま湯で戻してからもみ洗いし、裏側の毛はこすり落とすのが一般的な食べ方です。
日の当たる断崖絶壁にしか生えないため、採取するために非常に危険を伴い転落事故がつきものだったそうです。
筆者はこの先の急な崖の斜面で見つけました。しかし両手を使って後ろ向きで降りていたため、撮影は困難でした。崖の斜面では撮影できなかったので、フォトACから写真を調達させていただきました。
崖の途中に取り残された男の悲話「吉作落とし」大分県に伝わる「昔話」にはこんな悲話があります。
トラウマ続出?背筋がゾワゾワくる大分県の怖い昔話「吉作落とし」を紹介【上】あるところに、岩茸を採って暮らしている「吉作」という若者がいました。吉作は一人ぐらし。紅葉の美しい頃、傾山(かたむきやま)という山へ初めて入り、一人で岩茸を採っていました。
綱一本に捕まりながら断崖絶壁の岩茸をとるという大変な労力のため、疲れて周りを見渡すと、ふと崖の途中に人が座れるくらいの小さな岩棚があるのに気が付きます。
そこに降りて、一息つく吉作。
そろそろ上にあがろうとすると、なんと今までぶら下がっていた綱に手が届きません。綱は手を放した際に縮んで、上の方へ上がってしまっていたのです。
吉作は一人取り残されてしまったため、助けを求めて里へ向け何度も叫び続けますが、峠を行き交う旅人は化け物だと思ってしまいます。数日後、飢えと寒さでほとんど意識を失いかけていた吉作は「鳥のように飛べるかもしれない」と錯覚し、岩棚から飛び降りてしまったといいます。後に村人達はその岩場を「吉作落とし」と名付け、山に登る人々の戒めとしたという。
筆者はこの話を「日本昔話」で見たことがあるのですが、まさか自分でその岩茸を見ることがあるとは思いませんでした。秋になるとこの話を思い出してしまいそうです。
それにしても人間はどうやってこのような食材を発見したのでしょうか…⁉ あくなき食べ物への欲求、みなさまもほどほどに。
参考サイト:日本昔話データベース、食用植物としての地衣類
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