死の間際、認知症患者の記憶が突然はっきりと戻ることがある「終末期明晰」の謎 (1/4ページ)
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認知症は「長いお別れ」と表現されることがある。本人はまだ生きているが、これまでの記憶や思考がどんどん削ぎ落されてしまうからだ。
だが死の直前、何もわからなくなっていた認知症の人の記憶や意識が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
この不可思議な現象がなぜ起きるのか、今のところ確かなことは不明だが、いずれにせよ、それはずっと失われていた大切な人ともう一度触れ合う最後の貴重な機会となりうる。
今回はこの「終末期明晰」について詳しく見ていこう。
・終末期、認知症患者の記憶が明瞭になる「終末期明晰」
認知症になると不可逆的に記憶が薄れ、家族を認識することができなくなる。その人らしさも失われてゆき、会話もままならず、自分で飲み食いしたり、自分がどこにいるのかを把握することができなくなる。
大切な思い出やその人らしさを奪い取っていく認知症は、本人にとっても家族にとっても辛いものだ。
ところが不思議なことに、死の間際になって認知症の人の意識や記憶が、突然はっきりすることがある。これを「終末期明晰(terminal lucidity)」という。
こうした記録は19世紀からすでにある。認知症の患者の家族や医療関係者から、きちんと意味のある会話を交わせた、消えたはずの思い出が戻った、冗談を口にし、食事を欲しがったといった体験談が報告されているのだ。
だがその一方で、終末期明晰が起きた人の43%が24時間以内に、84%が1週間以内に死亡するという推定がある。つまりそれは死が迫っている時に起きるのだ。