紫式部が才能を隠すため“痴れ者“のフリをした処世術「惚け痴れ」とは?能ある紫式部は爪を隠す! (2/4ページ)
さらに「男でさえ、漢学の才をひけらかす者は出世もままならない」と聞かされてからというもの、「一」という漢字さえ書けないふりをして生きてきたのです。
よって式部は宮中でも、昔読んだ漢文の書物には一切目もくれず、屏風に書かれた漢文も読めないような顔をしてきたのでした。
それなのに「日本紀のお局」などと名前をつけられたら、人から避けられてしまうかも知れない……と、不安にうちひしがれてしまいます。
式部の処世術「惚け痴れ」式部の父親は、当代一流の漢学者でした。その影響もあり、彼女は漢学に秀でていました。
しかし「なぜ女性が漢字を読むのか」と非難されていた時代にあっては、その才能を隠しながら生きていくしかなかったのです。

それはいわば、紫式部の処世術でした。これについては、『紫式部集』に綴られた一節を、次のように独自の解釈を行っている学者もいます。
鬱陶しい女房たちとは、できれば付き合いたくありません。しかし仕事上、顔を突き合わせなければならないこともあります。その時はどうするかというと、彼女はひそかに「惚け痴れ」を実行していました。
問いかけられても、まともに答えないのです。「さあ、存じませんわ」「私、不調法で」などとかわして、ぼけてものの分からない人間を演じきるのです。