カリスマか逆賊か?気弱な貴公子か?令和の文芸作品にみられる将軍・足利尊氏の新しいイメージ (3/4ページ)
それは何でしょうか。
禅僧・夢窓疎石は、尊氏について「合戦で命の危険にあっても死を恐れない」「物惜しみせず、金銀すらも土石のように与える」などと評したといわれています。
また、他の史料からもそうした尊氏の人柄が読み取れます。
例えば、戦場で不思議な笑みを浮かべるほか、危険な戦場で近臣が陣屋に下がるよう進言しても「負ければ死ぬだけだから下がっても意味がない。敵が迫ってきたら自害する時を教えてほしい」などと言っているのです。
他にも、戦場で感極まると低い身分の者にも腰に差していた太刀を与えたり、死を恐れない一方で、家臣の功績に対しては手放しで喜びを表現するということもありました。
こういった不可解な行動は、かえって彼のカリスマ性を高める結果になったのでしょう。
気弱な貴公子ただ、これは別の見方をすれば八方美人で投げ出し屋とも取れます。戦場で事態が深刻になるとあっさり自害しようとして、周囲が何度も止めたりしたとか。
さらに命に対する執着が薄かったからか、政権を二人三脚で運営していた弟の直義や執事の高師直との関係がこじれると、あっさり2人を切り捨てています。
師直は直義に滅ぼされましたが、その後、直義は尊氏が毒殺したという説もあります。
こうした彼の人物像の矛盾点やわけの分からない言動は人気漫画『逃げ上手の若君』でも丹念に描かれていますね。