狼に片腕を噛み砕かれ…死闘の結果は?柳田国男『遠野物語』が伝える”命懸けの一騎討ち” (3/4ページ)
というのも、一頭の雌狼(恐らく母狼)が現れるや否や、この鉄を目がけて襲いかかったからです。
ようやく我が子の仇を討てる。母狼はこの日を待っていたことでしょう。
しかし鉄も剛胆ですから、黙って襲われたままではありません。
母狼がこちらに向かって来ると見るや、咄嗟にワッポロ(上着)を脱いで腕に巻きつけ、牙をむき出した母狼の口へ突っ込んだのです。
勝負の結果は相討ちに
狼の咬合力は人の腕など簡単に噛み砕けますが、完全に喉を塞がれてしまうと、苦しくて力が発揮できません。
「おい、誰かコイツにとどめを刺してくれ!」
ワッポロごしとは言え腕を噛み砕かれる苦痛に耐えながら、鉄は声をしぼり出して仲間たちに呼びかけます。
しかし仲間たちはみんな怖がって、とどめを刺すどころか動くことすらできません。それだけ鉄と母狼の死闘が鬼気迫るものだったのでしょう。
鉄の腕はグイグイ押し込まれ、ついには母狼の腹まで到達しました。
執念で耐え続けていた母狼ですが、呼吸ができないためとうとう息絶えてしまいます。
いっぽう腕の骨を完全に噛み砕かれてしまった鉄も無事ではなく、仲間に担がれながら帰ったものの、程なく亡くなってしまったのでした。
終わりに
四ニ 六角牛山の麓にオバヤ、板小屋などいう所あり。