滅びゆく名門の誇り…反骨の貴族・大伴家持が『万葉集』に託した最後の歌【後編】 (6/7ページ)

Japaaan

大伴家持像と国府跡(高岡市万葉歴史館)

その家持の一首が、『万葉集』全20巻・4516首の掉尾を飾っている。しかもそれは、家持が歌人人生の最後に詠んだ、まさに絶唱とも呼ぶべき一首であった。

759年(天平宝字3年)正月、家持は「橘奈良麻呂の乱」の余波を受け、因幡守に左遷される。その赴任先で迎えた新年、因幡国府における年頭の儀で、彼はこの歌を詠んだのである。

新しき年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事(よごと)
――「新しい年の初め、初春の今日降る雪のように、良い事も絶え間なく積もり重なっていきますように。」

一族に対して注意深く、かつ深慮をもって行動するよう諭した家持の姿勢は、大伴氏という名門貴族であるがゆえの自負心に支えられていた。

その一方で、新興勢力である藤原氏が我が物顔に朝廷を支配し、ヤマト王権の創設期から大王と歩んできた名門諸氏(大伴氏・物部氏・佐伯氏など)が次々に没落していく状況にあって、家持が最後に詠んだとされるこの歌は、なおいっそう重い意味を帯びているのではないだろうか。

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