2024年紅麹事案 研究解説「天然物に未知の物質があるのは当たり前である——そしてそれは簡単に同定できない——~ そしてそれがかつ毒性を持つなど、奇跡×奇跡」 (5/6ページ)

バリュープレス

ペニシリン、コンパクチン、アフラトキシン、いずれも同定の確立には年単位の作業があった。

 しかし今回問題なのは、第二の命題についても同様に、独立した検証が行われていないという点である。ある物質が「存在する(かもしれない)」ことと、「それが毒性を持ち健康被害の原因となる」ことは、まったく別の科学的命題である。

 確率論的に表現するならば、今回の行政判断は——

奇跡①「完全同定できた(かもしれない)」 × 奇跡②「かつそれが毒性を持つ」
すなわち:断定が成立する確率 = P(完全同定) × P(実効毒性)
両者はともに独立した事象であり、いずれも未検証のまま「確認された事実」として公表された。

 という、二重の奇跡が同時に成立することを前提とした判断である。

 食品科学・微生物学・農芸化学を学んだ者であれば、これがいかに非現実的な前提であるかは基礎的な知識として理解できる。天然の発酵食品に由来する微量の未知成分のほとんどは、生体にとって無害であるか、摂取量が問題となる水準に達しない。「未知の微量成分が検出された」という事実から「それが健康被害の原因物質である」と断定することは、食品科学・微生物学・農芸化学のいずれの観点からも、科学的常識に反する飛躍である。

 今回の行政対応は、この二重の奇跡を、独立した検証なしに「確認された事実」として公表し、225社の企業名を公表したものである。科学を知る者にとって、この判断の軽率さは明らかである。当社はこれからも、行政文書に基づく事実の記録と公表を続けていく。

【行政原則との関係】 本来、食品衛生行政は「不確実性が大きい場合ほど、断定を避け、予防的措置にとどめる」ことを原則として発展してきた。その観点からも、今回のように独立した検証なしに特定物質を「原因物質」と断定し、企業名を公表した対応は、食品行政の基本原則に反するものといわざるを得ない。

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