なぜ都市部で「園庭を知らない子ども」が増えているのか? 私立保育所の7割が園庭なしの危機と、幼児教育が向き合う「体験格差」 (3/3ページ)
そして年長児では、自ら育てた野菜を克服し「美味しい」と微笑む。環境が、子どもの知的好奇心と精神的成長を力強く後押ししている。
その影響は家庭へも波及している。創立年数と同じ114個のブラックベリーをジャムにして家庭へ届けたエピソードや、園での菜園活動を機に、野菜嫌いだった子どもが今では家でも野菜を好んで食べるようになったという保護者からの報告など、園での体験が家族の日常を豊かに変えている。
これらの変容には個人差や家庭環境の影響も含まれるが、園庭という「きっかけ」が子どもの可能性を広げる強力な装置となっていることは間違いない。
対極的な2つの園庭は何を育むのか――環境格差の是正に向けた「園庭シェア」の試み岡氏は「子どもがその場所でどう学び、成長するかを具体的にイメージすることが園選びの第一歩」と語る。同園では、集団行動の場である「第一園庭」と、個が自然に没頭できる「第二園庭」を使い分けることで、子どもたちが自ら居場所を構築できる設計を施している。
今後の目標は「地域から園庭を知らない子を無くすこと」だ。その一環として、園庭のない近隣保育所と提携した「園庭シェア」を開始。同園のスタッフがガイドを務め、地域全体の体験格差の解消に乗り出している。また、週末の園庭開放「志のぶわいわいパーク」などを通じ、地域社会における「子ども文化」の再生を目指している。
「園庭シェア」という試みが、都市部が抱える構造的な教育格差をどこまで是正できるか。持続可能な地域資源としての幼稚園の新たなモデルは、行政や周辺施設との連携を深めながら、その輪郭を確かに描き始めている。
【取材協力】
学校法人久光学園志のぶ幼稚園
理事長・園長 岡 秀樹
志のぶ幼稚園 HP https://shinobu-kg.com
Wonderland Story HP https://shinobu-wonderland.com/