「闇社会の守護神」田中森一氏 本誌だけが知っている「遺言」のすべて (3/4ページ)

日刊大衆

根岸氏は遺作となった同書の取材及び、構成で田中氏をサポートし、壮絶な闘病の一部始終に間近で接したという。
「『遺言』の作業は田中氏が胃がんを再発させ、入院治療をして退院する4月下旬から再入院するまでの7月中旬の約3か月間にわたり、週に2~3回、1度に30分~1時間ほど、体が悲鳴を上げる中で、まさに命懸けのものでした」(根岸氏)

満身創痍の田中氏を突き動かしたものは何か。また、ラストメッセージに込めた思いは、なんだったのか。
その一つが根岸氏の指摘どおり、自身の名誉回復だったことは同書にくわしいが、それは同時に法律家としての矜持、そして、人としてのあり方でもあった。

〈私は法律というスコップを手にドブ掃除をしてきた。盗人にも三分の理、その三分を強調してやることが弁護士として、被疑者の人権を守ることにつながる。(中略)ときには法律を犯しても大切なものがあるのだ。清流に魚は棲まない。きれいごとのみで世の中は上手く回らない。ヤクザの存在は必要悪である。何ごとも事件が起こってからでは遅い。大切なことは事件になる前に未然に防ぐことである。そんな掟を自ら定めた一人の男が法曹界で生きてきた。その掟を正義とするのか、それとも悪とするのか〉
(『遺言』第七章より)

弁護士としての一線を越えたと猛省する一方、独自の正義感を持つ田中氏は法曹界にあって、稀有な存在だった。同氏との共著もある作家の宮崎学氏は、「本来は彼のような法律家こそ必要」と語り、こう続ける。
「やはり司法と人情というのは密接に関係していると思うんです。人情味のある司法の運用がなされた場合、人は反省しやすいし、被害に遭った人も理解しやすいと思うんです。罪を憎んで人を憎まずという司法の在り方の原点に回帰し、法律に血や涙を注ぎ込むような司法官がいなくなった昨今、田中さんは人情味の機微を大切にした本物の法律家でした」
宮崎氏の指摘どおり、田中氏は最後の一瞬まで、自身が描く理想の法律家像を貫いた。その証拠が、今秋から本誌で開始予定だった"幻の連載企画"である。

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