反権力色が薄れる「報道ステーション」の行く末
BPO(放送倫理・番組向上機構)という組織がある。NHKや民放などで構成された第三者機関で、放送倫理上の問題が生じた番組をチェックして審議する。
そのBPOが、2月9日、「報道ステーション」が、2014年9月10日に行った川内原発報道についての審議結果を公表した。
委員会の決定は、「放送倫理違反」については、これを認めて厳しく論及したものの、局側の事後対応は「迅速で適切だった」とし、「誤報ではあったが捏造ではなかった」ということで、「これを教訓として今後の報道にあたって欲しい」と、柔らかな警告で締めくくっていた。
実は、BPOの決定そのものは、それほど大きな社会的意味をもたない。川内原発報道における「火山の噴火基準」と「竜巻の噴火基準」の取り違えなどは、悪意があったわけでなく忙しさのあまり、チェックを怠った編集上のミスだった。
むしろ、今後、注目すべきは、「報道ステーション」に向けられる社内外の目がより厳しくなり、反原発、反安倍政権といった色彩の強い番組のスタンスが揺らぐのではないかという点だ。
「早河会長が古館テイストを嫌っている」
テレビ朝日関係者が証言する。
「当社に君臨するのは、朝日新聞の天下りではなく、初めてテレビ朝日のプロパーから社長に就任、昨年6月には会長となって院政を敷いた早河(洋)さんです。その早河さんが、古舘(伊知郎キャスター)色を嫌っており、路線を変更したがっていました」
そして、BPOはその路線変更に使われた、という指摘がある。
「ミスではありましたが、2日後の12日には5分もの時間をかけて検証番組を放映、古舘さんが謝罪しています。それをBPOの審議事項にしたのは、むしろ局からの熱心な働きかけでした」(前出の関係者)
確かに、テレビ朝日は23ページもの報告書を提出。BPOによる厳しい指摘を求めており、既に、「報道ステーション」のチーフプロデューサーらは減給三カ月の厳しい処分を受けている。
BPOの決定に強制力があるわけではないが、2014年10月の審議入り以降、「報道ステーション」の現場は委縮せざるをえない状況となった。そこに前述の証言にあるような早河会長の思惑があるとすれば、確かに、「報道ステーション」のスタンスは、今後、注意深く見守る必要がある。
- 伊藤博敏
- ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある