はるしにゃんの幾原邦彦論 Vol.1 少女的理想と現実の狭間にゃん (2/5ページ)
彼の作品はどれも、ファンタスティックかつシュールな雰囲気のなかで、少女向け変身ヒロインものや学園もの、女性同士の友愛を描く百合系といったジャンルを横断しながら、多くの観客をうならせる哲学的なテーマを扱っている。そこにおいて重要となるのが〈運命〉である。『セーラームーンR』におけるタキシード仮面のセリフには「前世からの運命による恋愛なんて僕は認めない」という趣旨のものがあった。すなわち少女の理想を、一方では「幻想」的に、他方で「現実」的に扱っているとも言えよう。
また、近年の潮流として「百合」のような「ホモソーシャルな関係性」がトレンドとなっているが、その百合を現代における「システムへの抵抗」の契機として表現した『魔法少女まどか☆マギカ』の監督・新房昭之は、表現面でも、また当作においてはテーマ性についても幾原監督の影響を強く受けている。
幾原の強みは「テーマ性」と「映像表現」、そして「演出」である。そうした技巧派な彼の、しかしその真髄はそこにおいて繰り広げられる「ヒューマンドラマ」でもある。
2015年現在、彼の最新作である『ユリ熊嵐』が放送中であり、話題を集めている。この作品を読み解くには、彼の象徴主義的な隠喩として、「百合」「熊」「嵐」が、そしてそのあいだの「断絶の壁」が何を指し表しているのかを精緻に分析する作業が、シナリオ面でも映像表現面でも要されるだろう。
アニメーション監督としては、『ベルサイユのばら』などを手がけた出崎統や『機動警察パトレイバー』監督の押井守らに影響を受け、セル画の枚数・作画の力に頼らないで面白いものをつくるという信条を元に、ユニークな止め絵とトリッキーなバンクそしてギャグ演出などを得意とする。
おおよそ一般的な意味合いにおけるリアリティよりも抽象的な描写を好み、シリアスな出来事にも心理的なアプローチを行おうとする志向性ゆえに、ハッタリを効かせたり、メタファーやメタフィクションをよく用いる傾向にある。