スゴ腕・万引きGメンが見た「現代ニッポン」の貧困現実 (3/4ページ)
「彼女は"警察にだけは……"と、とにかく通報されることを極度に恐れていました。健康保険証を見ると、56歳の主婦で旦那さんと子ども2人の4人暮らし。警察を極端に嫌がる犯人は大抵マエ(前科)があります。後でわかったんですが、彼女も前科6犯で、2週間前にも近所のスーパーで捕捉されたばかりでした。結局、その悪質さから、店のマネージャーが警察に通報したんですが……」
通報されたことを知らなかった"狼女"、突然、現れた警察官を前に動転。ついにはバッグからハサミを取り出し、自ら刃先をノドに付きつけて「あたし、死にます!」と叫ぶ大立ち回りを演じた末に逮捕された。
「万引き犯は、基本的にみんな嘘つきなんです。常習犯なのに"今日が初めてだったんです!"と土下座して謝るのは序の口。事務所に連れてきた途端、"胸が痛い、心臓が……!"と倒れる老人や、ヨダレを垂らしながら、おしっこや"大"まで漏らす犯人もいました。もう嫌になりますよ。また、補捉する際に抵抗する人間もいます。私も小さなナイフを持った男に首を切りつけられ、血が噴き出したことがあります。あと数センチずれていたら、動脈が切れて死んでいました。襲われた場合、私は空手のローキックを相手の太ももに打ちつけ、動けなくするようにしています」
スゴ腕Gメンとして10年以上にわたり活躍する伊東氏だが、精神的な苦痛は決して消えないという。
「結局、いつも人を疑って見ないといけない。この仕事を真面目にやろうとする人ほど、苦しくなって酒に溺れたり、心を病んでしまったりする。悲しいことですが、実際、私も親友だったGメン仲間を自殺で失っています。そもそもこの仕事は待遇が良くありません。Gメンの日給は良くて1万円程度、管理職クラスでも年収はせいぜい400万円程度です。体を張る仕事内容に決して見合った収入は出ません。Gメンは7、8割が女性ですから、不良や外国人窃盗団のような危ない相手は見て見ぬふりで、抵抗されない老人ばかりを捕まえがちです。最近、高齢者の万引きが増えたと言われますが、実は、それよりベトナム人や中国人の窃盗グループが急増している。