市場規模は1.7兆円…ビジネス化する“死後啓発”の舞台ウラ (2/2ページ)
死後を肯定的に捉え、成長につなげる
最近、比較的若く、特定の宗教色を持たない人たちが死後について語り始めている。彼らの主張は共通する部分が多い。瞑想や宗教的な体験で死後の世界がどうなっているかを知り、死後を肯定的に捉えることで、現在の成長につなげるとする。こうした著者の本は、書店では、一般にスピリチュアルといわれる自己啓発ジャンルのひとつとして扱われている。

『99%の人が知らない死の秘密』(山川紘矢・阿部敏郎/興陽館)もそのひとつ。著者のお二人には現在の終活ブームはどのように見えているのか?
「いま言われている終活は、葬式などの生前準備であり、業界に乗せられている面もあります。やりたければやればいいし、そうでなければしなくていい。葬式などという迷信から多くの人が目覚め始めると考えています」(阿部)
「死は本当はいつ来るかは分からないのですから、準備することはいいことだと思います。死の準備をすることで、安心した老後が過ごせるのだと思います。周りに迷惑をかけないようにする、最小限、必要な事ではないでしょうか」(山川)
スピリチュアルにおける死生観を学ぶと何が変わるのか?
「精神世界の勉強をすれば、死というものはさほど恐ろしいことではない、ましてや死後の世界を信じれば、死は一種の楽しみになるでしょう。『ああ、いい人生だった』と言って、死ねたら、すばらしいですね」(山川)
「肉体が死んでも本当の我々に死は存在しないというのがこの本のテーマではありますが、その一方で、肉体は必ず死に、個の人生には終わりがあるというのも真実です。この真実をしっかり自覚することで、コントラストのように、生きるということが見えてきます」(阿部)
死を楽しんで迎えられるということか?
「私の父も、母も『とても良い人生だった』と笑顔で言って逝きました。本当は戦争と貧困で大変な人生だったのですが、終わりよければ、全てよしになるのが人生だと思います」(山川)
時代とともに死に対する捉え方も変わっていくのだろう。そしてスピリチュアルにおける死生観が、現在もっとも新しく、社会のニーズに合った死後のイメージを提供している。それは死のポジティブ化だ。
自己啓発は沈滞化する経済情勢とは裏腹に一大ブームとなり、企業研修も含めると1兆円市場まで拡大した。高齢者が増え続ける中、死後の世界も同様に市場を形成すると思われる。今後、自己啓発ならぬ死後啓発がどのように社会に浸透していくのか、興味深い。
(取材・文/川口友万)