全国で急増中、引きこもり支援施設が裏社会の新たなシノギになるか
全国に「引きこもり」と内閣府が認定した人数は約60万人以上となっており、年齢階級別に見ると15歳から19歳が9万人、20歳から24歳が15万人、25歳から29歳が17万人、30歳から34歳までが18万人と言う膨大な数字が発表されている。
現在、全国にNPO等の引きこもりの社会復帰を支援する団体が数多くの施設を運営している。だが、こういった施設の全てが信用が出来るわけではない。一部の施設には背後に裏社会が関係しているという噂もある。その真相を確かめるべく、筆者は関東某県で「引きこもり支援施設」を運営している団体の理事に話を聞いた。
なぜ施設を始めたのかと問うと、アッケラカンとして「オイシイからですよ」という独特の言い回しで答える。そんな人物との以下、一問一答である。
◇◇◇
――施設のオーナー(運営者)はどのような人物なのか。
「元々はヤクザですよ、自分の兄貴分に当たるんですけどね。兄貴がヤクザじゃ食えないから、と。今の旬は引きこもりだろ、貧困ビジネスに参入するにはもう遅い、と考えてこれを始めたのがきっかけ」
ーー今は組織とは関係ないのか。
「繋がってるよ。引きこもりからヤクザになった奴もいたしな。すぐにケツ割ったけど」
ーー先ほど「オイシイ」と言ったが、そんなに儲かるものなのか。
「地元の色々な人間からの寄付もあるし、引きこもりの親から集める月の会費だけでも儲かる。安く畑を借りてるから、野菜はそこで自給自足。農作業自体がカリキュラムになっているから一石二鳥なんだよ。基本的な食材費は米と肉以外は金が掛からない。うちは今数ヶ所でこの様な施設を運営しているけど、一つの施設で利益は3桁は出る」
――入会金と毎月の会費はどれほどのものか。
「細かく言うと特定されちゃうから、ざっくりと。入会金が約100万円、月謝が寮費を入れて約10万円。それと施設運営費とか諸々の行事の時に数万円といったところ」
――運営はどのように行われているのか。
「『引きこもりを立て直す』と言えば、廃屋寸前になっている空き家は凄く安く調達できる。大家が趣旨に賛同して無償の場合もある。そこを安く修繕して、シェアハウスのようにいくつかの小さい部屋に分けて、簡易ベッドを置けば完成。あとはホームページで引きこもりを支援します、とかおいしい言葉を並べれば入居者はすぐに集まってくる」
――この施設は国から認められている組織なのか。
「そんな国から認められるようになったら儲けが少なくなるでしょ。収支もキチンと報告しなければいけないし。それにNPOって非営利団体でしょ、うちは儲かる為にやっているから、普通に法人登記してるだけだよ。あと、物件の登記を『寄宿舎』にするとか、正規の手順を踏めば、法律的にも問題なく運営ができる」
――どの様な人間が入居しているのか。
「うちは17歳から30歳までの引きこもりで、畑仕事に耐えられそうな奴限定。つまり、カラダは健康そうな奴ってこと。心と体の両方が病んでるような奴は入寮を断っている。親の金で入ってくるケースがほとんどだな。口が軽くて泣きを入れそうな奴もうちの実態を見ると口が固くなるよ(笑)」
――実際に引きこもりから脱出はできるのか。
「できるよ。うちは厳しいから。うじうじしてた奴も数ヶ月いれば人間が変わった様に逞しくなる。うちはヤクザの部屋住みより全然厳しいからな。手は出さないけどやる事をやらないと毎日行う集会で下からケツ捲られちゃうから。これはよく少年院とかでやる方法なんだけどな。だから最初に入った奴は一生懸命にやるし、後から入った人間は下からケツ捲られないように一生懸命にやるよ。そうやって入寮者の上下関係を厳しくすることで自然と規律が身に付いてくるんだよ」
――管理体制はどうなっているのですか?
「住み込みの管理人夫婦が主にやっている。元々うちの若い衆だけどな。見た目がいいから、うまく回っている。それと精神科だけど、ちゃんとした医者が嘱託医として構えている。救急の場合は町の救急病院に駆け込む。今まで何の問題も起きていない」
――このような施設はあってもいい。しかし、裏社会の人間が一つのシノギとしてやるのはいかがなものか。
「シノギは早い物勝ちだから。見つけた俺たちが勝ち組だってだけのことだよ」
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以上が、ある「ひきこもり支援施設」の実態だ。どこか「貧困ビジネス」のようであるが、その実態は違う。
貧困ビジネスの本場、大阪では取り締まりが強化され、ある区役所では支給日に保護費を金貸しに取られるのを防ぐ為に警察官を配置しているほどだ。食事付きで生活保護費をほとんど搾取してしまう古典的な「貧困ビジネス」も少なくなっており、それにとって代わる新たなシノギとして今後増えていくことが予想される。何か大きな問題が起こる前に何らかのガイドラインが必要だろう。
Written Photo by 西郷正興