吉田豪インタビュー企画:作詞家・及川眠子「たかじんはワガママで気が弱いオッサンです」(1) (2/3ページ)

デイリーニュースオンライン

たかじんに説教したことも

──たぶん悪い人じゃないです! ただ、ボクはしょせん第三者でなんの接点もないからおもしろがれますけど、たかじんさんを知ってる人は相当モヤモヤするだろうなって思ったんですよ。

及川 私は音楽の仕事で現場で、誰が支えてるのかっていうのはずっと見てるわけですよ。もう10年ぐらい会ってなかったので最近のたかじんのことはよくわからないですけど、そういう人たちが犯罪者みたいに悪く書かれてるっていうのが、許せなかったんですね。

──及川さんが一緒に仕事した、どうしたって悪には見えなかったはずのたかじんさんの側近が悪として書かれていた、と。

及川 そう! 要はマネージャーですよね。

──及川さんの本『夢の印税生活者』(03年/講談社)がすごいおもしろかったんですけど、あそこで書かれてる及川さんとたかじんさんの関係は良かったですね。たかじんさんがどれだけ面倒くさい人なのかが伝わってきて(笑)。

及川 うん、面倒くさい人です。ワガママで気が弱いオッサンですよ(笑)。

──無頼を演じる人だから、酒が入ると無頼モードになって電話してきたり。

及川 そう! まあ、演じてたんですよね。

──ボクも1回取材したんですけど、ホント大変だったんですよ。

及川 そうなんですか?

──『たかじんnoばぁ~』が1回だけ復活してDVD化される公開収録のときで、まず収録中に酒を飲んでるわけですよ。

及川 ああ、『ばぁ~』は飲んでますね。

──で、たかじんさんが飲みに行きたくなったら勝手に収録を終わらせるシステムになってるわけですけど、その直後の取材だったから、飲みに行きたくてしょうがない状態のまま、ホテルの一室で周りを30~40人のスタッフが取り囲むなか、たかじんさんがひとりで飲んでるんですよ。

及川 うわーっ(笑)。

──スタッフもすごい気を使っていて、たかじんさんが何を言ってもみんな一斉に「ハハハハハハ!」って笑ったりするような、すごいやりにくい状況で、雑談もできないんですね。「とっととインタビュー終わらせて解放してくれや」っていう空気が伝わってくる感じの。

及川 うわ、キツッ(笑)。そうなっちゃってたんですかね。

──当時は、たかじんさんとの仕事はやりづらかったですか? 距離感があるから大丈夫とか?

及川 うん、距離感があるのと、そんなにベタで会わなかったっていうのとで。前に、たかじんがビクター所属のときの作家ってわりと一緒に合宿して、一緒に作り込んでいくって感じだったんですけど、私はそのやり方を嫌うんで。「何やりたいの?」って聞いて、「わかった、それで書いてくるから」みたいな。

──酔っ払ったたかじんさんが夜中に電話してきても及川さんは無視するし、それどころか及川さん、電話で一回たかじんさんを怒鳴ったこともあるらしいじゃないですか。

及川 怒鳴ったというか説教したんですよ。たかじんはいろいろ言いたいんですよ。言いたいんだけど、私は全部はねつけるんで。そうすると向こうも、「あ、そうか」みたいな感じで。

──納得はしてくれる。

及川 納得は。で、たまに会って話しても、「うん、じゃあまあ眠子に任せるわ」みたいな感じで。

──いい距離感が保てた、と。たかじんさんって、スタッフとの関わり方がハードだったじゃないですか。テレビのスタッフを窓から投げ捨てようとしたりで(笑)。

及川 そう、殴る蹴るするし。でも、なんとかやってましたね。

さくら夫人に、たかじんの骨壺を見せられて「この人は変わってるな」って(笑)

──さくら夫人と結婚した頃、リアルタイムで話は聞いてたんですか?

及川 それは聞いてなかった。その頃はもうつき合いがなかったので、そこらへんはもう全然で。亡くなってからですね。

──『金スマ』のたかじん特番とか観て、「あれ?」ってなり始めたような感じですかね?

及川 亡くなって1ヶ月後の追悼番組に来てくれと頼まれたんですよ。やだって言ったんですけど、どうしてもって言われて。

──やだって言ったんですか(笑)。

及川 それで仕方ないから大阪まで行って。その番組に出て帰るとき、声をかけてきたのがさくらさんです。すっごい感じのいい人なんですよ。

──ほう!

及川 小倉優子みたいなしゃべり方する人で、感じのいい人だなと思ってたんだけど、やっぱり骨壺がね……。こうやって骨壺見せられると、この人は変わってるなって(笑)。

──さくら夫人が、なぜかたかじんさんの骨壺を抱えていて。「不思議ちゃん」のひと言で片づけていい感じではなさそうだぞってなりますよね。

及川 うん、あの骨壺を下げてくるのは感覚的に「ん?」っていうのがあって。そのあと、たかじんを偲ぶ会に行ったとき、まずマネージャーとか音楽関係がほとんど呼ばれてなかった。そこで「あれ?」と思って。で、たかじんの兄弟と娘に紹介された。そのときも「あれ?」と思ったのは、「なんで親族がこんな末席? で、なんで嫁は真ん中?」っていうのがあって。そのあと、さくらさんに名刺を渡されたら「オフィスたかじん」って書いてあって、「うわーっ、これは揉めるな」と思った(笑)。

──ダハハハハ! その時点でもう見えてたんですね(笑)。

及川 これは揉めるなって。そのあとに、たかじんに20年ずっとついてたマネージャーの野田さんの還暦祝いに呼ばれて大阪に行ったとき、Kマネって呼ばれてる彼に「あの女は何?」って聞いたのかな。「じつはフェイスブックで知り合って」とか、そういうことを。

──フェイスブックで知り合った経緯もミステリーですよね。『殉愛』ではたかじんさんがネットナンパしたことになっているけれど、さくら夫人からいった説も濃厚だったりで。

及川 そうそう、もうなんとでも言えますからね。

──あのたかじんさんが知らない女にネットで声をかけてくるかって話ですよね。

及川 べつに女に困ってる人じゃないし。

──顔写真も出てない人にナンパみたいなことするかなって。

及川 第一、やしきたかじんってすっごい面食いだから、「ん?」みたいなのもあったし(笑)。

──そしたら案の定、騒ぎになって、及川さんがTwitterでコメントしたっていう流れなわけですね。

及川 そして売名行為と言われ(笑)。

──百田さん、ホントに及川さんのこと知らなかったんですかね。

及川 ホントに知らなかったと思います。

──『殉愛』で及川さんの歌詞を引用してるのに! ボクにしてみれば、ホントにずっと名前を見てきた人なわけですけど。

及川 あの人は歌とか興味ないんじゃないかな。だから、歌手やしきたかじんに興味を持ったわけではないと思う。

──百田さんはよくも悪くも放送作家だから、『探偵!ナイトスクープ』とかを担当してきただけあって、ポップじゃない素材をポップにする才能はすごい人だと思うんですよ。

及川 ああ、すごいありますね。あとやっぱりデータを寄せていろんなものを集めてきてわかりやすく見せるっていう、あれは放送作家ですよね。

──わかりやすくするために多少の加工をよしとする、みたいなことも放送作家センスなんだと思うんですよ。ノンフィクションライターならやらないような。

及川 やらないですよね。

──……という流れを踏まえた上で、これ、おもしろい騒動って言っちゃっていいんですかね?

及川 おもしろい騒動ですよね(笑)。

──Twitterのフォロワーは増えたりしました?

及川 増えましたね。私、Twitterも3年ぐらい放置してましたから300人ちょっとしかいなくて。それがいきなり5000とかにバーンと増えて。

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