【プロ野球】5年は我慢を…入団に立ち会うアマ指導者のドラフト交渉術

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写真はイメージです
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 ドラフトから2週間以上が過ぎ、12球団はそれぞれ指名選手との交渉を進めている。数年前は「巨人に行きたい」と指名を拒否した長野正義や菅野智之のような例もあったが、近年は「拒否」する選手はおらず、スンナリ決まることが多い。

「指名選手の半分が拒否した時代もあったが、その点で最近は余計な神経を使わずに済む。大物選手は自分で行く先を決められるが、特定球団の名前を挙げて『○○以外は行かない』という大物がいないためでしょうね」(あるプロ野球関係者)

「家や車、愛人」に注いだ契約金からのお礼金

 ドラフト指名選手との交渉の席では、どのような話し合いが行われるのだろう。ある甲子園活躍投手の元プロ野球選手は次のように教えてくれた。

「球団代表や球団社長が条件提示を行い、監督同席の下で『よろしくお願いします』と。ただ、この言葉だけは覚えています。『芽が出ないかもしれませんが5年は我慢してください。でなければ、お付き合いがしにくくなります』と。ウチの監督は教え子を何人もプロに送っており、簡単にクビにされては面子にもかかわります。球団は地元でもあったため、悪い評判が立って選手を獲得できなくなると困るでしょ。そこを突いたわけです」

 近年は高校生をわずか2~3年でクビにする球団も出てきたが、指導者からすると、そんな球団には教え子を送り込めない。

「今は統一契約書になっており、交渉できるのは年俸交渉だけですが、昔は契約条項に『引退後は球団に雇い入れる』なんて文言を書いてくる球団もありました。つまり、監督が大物だと球団も気を遣うわけです」(前出の投手)

 ただ、誰もがこのように交渉上手なわけではない。あるスカウトが語る。

「かつてのPL学園や横浜高校のように、プロに何人も入っている高校は監督も交渉術を知っているが、教え子が初めてプロに行く、なんていう学校の監督は、嬉しさのあまり、何を話しても『ハイ、わかりました』ばかり。特に公立高校の監督がそうだね」(同)

 また、かつて選手の契約金の一部を“お礼”として渡すよう要求する監督もいたという。

「『わかってるだろ、3本な』と。30万円渡したら『アホ! ゼロが1つ足りんわ!』なんて具合でした。その監督、家はA選手、車はB選手、セカンドカーはC選手の契約金で購入してましたね。今でも仲間内で集まると『俺が車でオマエが家だろ』なんて話していますよ。遊びを覚えてコーチに練習をまかせたその監督が、愛人と遊んでいた時期の卒業生は『俺は愛人かよ!』といまだに怒っています。そんな監督だけに、甲子園から遠ざかりましたけどね」(同)

 しかし、名門高校の監督は「そんなつまらないことはしない」(同)そうで、教え子自ら「後輩のために」と寄付をしてくる。バッティングマシン、金属バット50本、硬式ボール100ダース、あるいはグラウンドに建てる監督室などであり、そこには「寄贈 ○○期卒業 ○×」と記されている。甲子園常連監督はきちんとしているのだ。

 教え子から渡されるお礼は使い方次第。やろうと思えば私腹も肥やせるが、野球のために使うのが本道だろう。

(取材・文/小川隆行)

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