吉田豪インタビュー企画:紀里谷和明「僕が仮にイケメンだったとしても何のメリットもない!」(2) (5/5ページ)

デイリーニュースオンライン

日本で内戦が起きているように感じる

──話はガラッと変わりますけど、デジハリ(※クリエイターを目指す人のための専門学校のデジタルハリウッド)の講演の模様をネットで観たら無茶苦茶おもしろかったです。

紀里谷 そうですか、あれもたいへんだったんだよねー。マスコミが来てると思ってなくて。

──そういうことだったんですか。

紀里谷 まず前段階があって。あそこで『ラスト・ナイツ』の試写をしてたら途中トラブルで映写が止まったりとか、緩い環境でやってたわけですよ。「おいおいおい、そもそもアートを教えるような専門学校でこりゃないんじゃないの?」っていうイラつきが俺のなかであって、いざ壇上で話し始めたら緩いこと言うヤツばっかりで……火が点いちゃったんだよね。

──ダハハハハ! あれ読んで好きになりましたよ。

紀里谷 マジですか(笑)。

──おもしろいじゃん、この人っていう。

紀里谷 でも往々にして言ってることではあるんですけどね、特に学生君とか若い子たちのところに行って話することあるんですけど、つい言っちゃいますね。

──全然ありですよ、おもしろかった。

紀里谷 ほら! ありがとうございます! そう言っていただけると。それが違う記事でまったく違う書かれ方をして、ただ紀里谷が作品に対して文句を言われて怒って「おまえら帰れ」って言ったみたいに書かれちゃったから、これは違うんじゃないの? っていうのはありましたけどね。いまって見出しだけで動いちゃうじゃないですか。

──とりあえずクリック数を稼ぐためのタイトルで。

紀里谷 でしょ? 読む側も全部読む時間ないから、なんとなく見出しで想像しちゃって次いくみたいなところってあるじゃないですか。すごく危険だと思うんですよ。僕だけじゃなくてありとあらゆることが、みなさん理解してるつもりなんだけど、何も理解しないままどんどん先に進んで行く。安保の話なんていい例だと思うんですけど。俺についても紀里谷のことを知ってるていで悪口言うんだけど、なんにも知らないじゃないですか。『CASSHERN』のこともすごい悪口言うけど、なんも知りませんよね、観てもいませんよねっていうことがすっごく多いなと思うんですよね。

──Twitterでよく反論してますもんね。「『CASSHERN』は興行的に失敗した」「いや、失敗してないんですよ」とか。

紀里谷 そうそうそう。それも以前はいいやって思ってたんだけど、1コ1コ丁寧にひっくり返していかないと、それが固定しちゃったらそれに関わってるヤツらにも申し訳ないし、あと自分のこれからの作品に対してもよくないと思うし。「ま、しょうがねえや」じゃいかんのかなっていうのは思いますよね、最近。もっと言えば、そういう言動がまかり通る風潮になってるわけじゃないですか。論調としては、「そんなのほっとけばいい」とか「関わらないほうがいい。関わっちゃうとそいつらが助長する」とか、「そいつらは関わってもらいたくてそういうこと言ってるんだから、関わっちゃダメ」とか。

──そう言う人は多いですよね。

紀里谷 だから、たとえばテレビとかでもコンプライアンス、コンプライアンスって言ってしまって、クレーム入れてるヤツなんかホント少数なのに、そこに怯えちゃってるわけでしょ。だって子供もそういうものに怯えちゃって、炎上するかもしれない、イジメられるかもしれないってホントに言いたいことも言わなくなっていく。なんかおかしいと思うんですよ。過激なこと言うようだけど、内戦が起こってる感じがすごいするんですよね、日本国内において。

──わかりにくい形での内戦が。

紀里谷 そう! たとえば一生懸命何かを頑張ろうっていう人たちがいる。それに対して「何頑張っちゃってんの?」っていうネガティブな批判をしながらどんどん人を貶めていくグループとの内戦のような気がするわけですよ。こっち側のちゃんとやろう的なヤツらが、反対のヤツをすごい恐れてるんですよね。でもそんなに恐れるべき存在なのかって思っちゃうんですよ。実際問題、会ってみたら「なんだ、こんなヤツらがこんなこと言ってんの」っていうことになるはずなのに、そういう発言はしないようにしようとか、行動に移さないようにしようとか、気をつけようっていうムードがすごい蔓延していて。特に日本はそれがひどくて、ものすごく損益を与えてる。いわゆるイノベーションが起きないわけですよね、そんな社会は。みんなビビッてるわけだから。なんかやったらバカだって言われちゃうとか。それはよくないと思う。俺はそれは闘うべきなんじゃないですかって気持ちなんですね。ひとつひとつ面倒くさくても。

──それをTwitterでも実践しているわけですね。

紀里谷 だって間違ってるのは向こうですから。「おまえが変だ、おまえらが間違ってるんじゃねえの?」っていうことを言っていかないとひっくり返らない。じゃないと、それに怯えた子供たちが量産されていくわけじゃん。俺はそれは誰に対してもよくないと思う。間違ってるのはどっちなの? ってことですよね。それは闘わなきゃいかんのじゃないかって思う。誰かがそういうことされてても言うべきだと思うし。

──ちなみにボクもTwitterで間違いは訂正して周るタイプです。

紀里谷 それが正しいと思うんですよ。

<続きはこちら>

『ラスト・ナイツ』

 忠臣蔵をベースに“最後の騎士”たちの戦いを描いた>紀里谷和明のハリウッドデビュー作。

 監督:紀里谷和明 出演:クライヴ・オーウェン、モーガン・フリーマン、伊原剛志、他 

 提供:DMM.com 配給:KIRIYA PICTURES/ギャガ (C) 2015 Luka Productions

プロフィール

映画監督

紀里谷和明

紀里谷和明(きりやかずあき):1968年、熊本県出身。15歳で単身渡米し、アートスクールでデザイン、音楽、絵画、写真などを学び、パーソンズ美術大学で建築を学ぶ。卒業後は写真家、映像クリエイターとして活動。2004年にSFアクション『CASSHERN』で映画監督デビューし、2008年にはアドベンチャー時代劇『GOEMON』を発表。このたび、監督作第3弾となる『ラスト・ナイツ』でハリウッド・デビューした。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(?)新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。

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