WELQ問題の真相を読み解く(1)「DeNAだけが謝って終わる問題だったのか?」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談 (3/3ページ)

デイリーニュースオンライン

■経緯、発表など振り返り
1) 撤退が小出し
2) 関係会社への配慮
3) 初動の関係者の処分は適正だったか?
4) 各メディアのキュレーションサイト問題に対する報じ方は?

山本)経緯などを振り返りますと、撤退が小出しだったんじゃないかと。WELQが撤退するにあたって代理店さん、タイアップやネイティブ広告を切って、ここまでやれば大丈夫でしょうと思ったらほかのDeNAパレットの各サイトが燃えて、同じように広告を切って…と。

あと、忘れてはならないイシューとして、クラウドソーシングにまつわる話ですね。文字通り、SEOのためのクソ記事量産エンジンだったわけじゃないですか。クソがクソを呼ぶ展開になっていて、ある意味でSEOに最適化されたビジネスのゴールデンルールになっていたことは、報告書でも書かれていた通りです。これを合理的かつ効率的にDeNAがやっていたということになると、クラウドソーシング会社や広告代理店など、関係会社に対してやはり重大な配慮をしなきゃいけなかったんじゃないかと思います。

単純にいうと、広告主に対してPV保証をしていた可能性は高いのに、報告書では触れられていません。取引先に関する、とりわけ契約に関する事実関係は全くと言っていいほど報告書には書かれていないのです。ただし、周辺の代理店が証言していたように広告記事でクライアントに保証されているPVに対して、表示されるページが良質ではないコンテンツだったら、これは本来なら返金しなくてはいけない。

クラウドソーシングによる低質な記事によるSEOでかき集めたPVとは別に、ちゃんとした記事を社員やバイトが用意していたのかもしれませんが、良く分かりません。何故書かなかったかはわからないですけれども、報告書には書いていないので周辺の状況で類推するしかないのです。

加えて、関係者の処分は適正だったのかと。端的に申し上げれば、守安功さんが社長に留任する形になりました。報告書であれだけ責任を追及されておきながら、最終的には減給処分のみであって、社長のポジションは留任されると。責任を問うという言い方でしたけれど、これは適正だったのかと不思議に感じます。

問題の最後に、各メディアのキュレーションサイト問題に対する報じ方はどうだったのかというのはどうしても残ります。ウェブにかかわる我々メディア全体の問題だと言ったメディアがあったのかと。BuzzFeed Japanは書かれていましたし、例えば三上さんが読売新聞で書きましたけれども、読売新聞がその他でこの問題を取り上げるにあたって、我々ウェブに情報を上げる業者全体の問題ですって言いましたか?

三上)言っていないですね。

古田)本当にそのとおりで、特に今回、新聞系の記事は、“インターネットメディアがダメなんだ”という書き方でかなりまとまっていたんですよね。僕BuzzFeed Japanで記事を書いたんですけれども、朝日新聞さん、僕が前いたところですね、その朝日新聞さんが「キュレーションなるものがあるらしい」とツイートをしていたんですよね。ちょっと待ってください、僕朝日新聞にいたときにキュレーションやってましたけど、って思ったんですよ(笑)。

山本)大爆笑的展開ですね。

古田)僕、朝日新聞デジタルっていうところで、キュレーションという手法をやっていたわけで。キュレーションって、それ自体はなんの悪でもないわけですよ。ちゃんと著作権とかに配慮していれば、別に世の中で、BBCだってCNNだってガーディアンだって、みんなやっているわけです。だから朝日新聞でもキュレーションをやればいいじゃん、っていうことで、やっていたんですよね。

でもそれを新聞社のなかにも知らない人がいっぱいいて、あれはもう、インターネットメディアの人には全然倫理観がないに違いない!みたいな書きっぷりをしているところが多かったですね。

山本)結構もう、悪玉として、DeNAのような悪徳企業が進出したWebメディアが派手にやらかしたくらいの論調で大体統一されていたと思うんです。例えば東洋経済オンラインなど、経済メディアさんでは、非常に強い論調でDeNA批判をするんですけれども、キュレーション問題をいわゆるガバナンス問題に置き換えたものが多かったですね。もちろんDeNA固有の企業ガバナンスの問題ではあるんですけれども、何故それを成立せしめる体制ができちゃったのかとか、ビジネスモデル上どうだったのかという踏み込みはほとんどしていない。

これには理由があって、彼ら自身もプレイヤーであるといった時に、あそこはあの広告代理店が入っていたからダメなんだ、あるいはPR会社に起用してもらうためにはこのぐらいの媒体価値がどうしても必要だ、というようなことが起きていたのかもしれません。当然、ウェブメディアもモノ言えば唇寒しであって、お前が言うな批判を受けることもあることを考えると、ものが言いづらいのではないか、と。

そうなると、なかなか東洋経済オンラインであれ、ダイヤモンドであれ、DeNA問題があるからといって、それに関わっている代理店ごと真っ二つにすることはできません。もしくはPR会社、芸能プロダクションさんごとぶった切ることはできないので、じゃあもう一連のカルマは全部DeNAに背負わせようという動きが合ったように見えてしまう。

読売でも、三上さんの発言としては出しても、社としてキュレーション問題にどう取り組んでいくかというところはついぞ出なかったんですよね。

三上)読売は、社会部がこの問題をやっていましたけれども、結局自分たちの振り返りはまったくしていないですね。

山本)大手新聞社で言えば、読売新聞は比較的物事を冷静に判断されていたとは思います。ほかの新聞社にしても、本当は、今回のDeNAのキュレーションサイトに関しては、実際の収益構造はどうなのか、誰が売り上げをつけていたのかというところまで書きそうな気配はあったんですけれども、最後結局書かなかったというのはちょっとどうかなっていうところはあります。このあたり、産経さんとか朝日さんとかも、大体似たような論調でまとまってしまった。

最後は日経ビジネスですね。ここは井上理先生が「DeNA問題、もみ消された社内からの警告」として書かれています。ここでは組織内の問題ってことで、悪い言い方をすると暗礁化する、良い言い方をすると問題の核心を突こうとする。

最後にインターネット系、Tech Crunch Japanは第三者委員会の報告書を公表という事実関係を述べて、一部所見を述べるところもあったと。書いているのは(副編集長の)岩本有平さんですけれども、岩本さん自身も業界事情には詳しいので、どうしても矛先としては起きたことの解説というほうへ向かざるを得ないというところはあります。

一方、BuzzFeed Japanですね。たくさん書かれていましたけれども、これはもうウェブメディア全体の問題じゃないかとはっきり書かれていました。まだ書かれ足りないところがあるんじゃないかっていうくらいに興味をもって僕らは読んでいました。この問題に非常に詳しい方がライターにいらっしゃったりして、ほかのメディアとかなり論調は違うなというふうに感じたんです。このあたりいかがですか?

古田)そうですね。書き足りないことはいっぱいあって、まだ書き続けるつもりなんですよね。それは二軸あって、ひとつはDeNA社の対応に関しても、まだ話として終わっていない部分がありますよねっていう話と、今山本さんから何度もご指摘があったように、メディア全体の問題として、DeNAだけに背負わせてはいい問題ではないですよね、という問題です。

前者に関しては取材を続けていますし、後者に関しては、日本だけじゃなくて、もう、世界で爆発している状況にあると。もうアメリカでも爆発しているし、ヨーロッパでも爆発していると。同じことは日本でも間違いなく起こっているんだから、日本でもやっぱり、今アメリカとかヨーロッパとかで起こっていることに関して、僕らは取材を続けていて、少しずつ出していこうと。

ただ、1社だけやってもこれってダメだと思うんですよね。やっぱりステマ問題のとき、何でステマ問題で世の中を動かすことができたかっていうと、いろんな方が、それはもう山本さん、三上さんもそうですし、いろんな社が一斉に書いた。ああいう風になっていかないと、なかなか変わっていかないのかなというふうに思っています。

山本)今回、DeNA問題が出てくるまでに実質上3ヶ月近くかかったわけじゃないですか。いちばん最初、いち早く朽木さんが問題提起を入れて、そのタイミングが少し早かったのかな、と僕らは当時思ったくらいだったんです。で、一斉に書くってなかなかやっぱり難しくて。同じ問題を一斉にやろうとすると、僕らでいうとコンプガチャ問題があったんですよね。一般メディアから業界媒体まであのくらい横に一斉に書くとさすがに変わるんですよ。

でも変わらせるための落とし所を業界全体で考えようということを器用にできないと関係省庁は動かないし、ほかのメディアさんも同じ目線で問題について取り上げない。

三上)タイミング命、なところもありますよね。ほかに大きいネタが出てきてしまうと、やっぱり盛り上がってはくれない。当局も対応しないとなると、騒ぎ損になってしまう恐れもあるわけです。

【第一回了】

WELQ問題の真相を読み解く(2)「買収の経緯に関して極めて不透明」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

WELQ問題の真相を読み解く(3)「キュレーションメディア『的なもの』は悪だったのか?」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

古田大輔

バズフィード・ジャパン創刊編集長。1977年福岡生まれ、福岡育ち。早稲田大政経学部卒業後、放浪生活を経て、2002年朝日新聞入社。京都総局を振り出しに、社会部記者、東南アジア特派員、デジタル版編集などを担当。2015年10月にBuzzFeed Japan創刊編集長に就任。趣味は仕事。
https://twitter.com/masurakusuo?lang=ja

山本一郎

個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一報、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。介護を手掛けながら、夫婦で子供三人と猫二匹、金魚二匹を育てる。
http://lineblog.me/yamamotoichiro/

三上 洋

セキュリティ・ネット事件・スマートフォン料金を専門とするITジャーナリスト。テレビ・ラジオ・雑誌などでの一般向け解説多数。読売オンライン「サイバー護身術」、アスキー「5分でわかる時事セキュリティ」などを連載。Ustream、ニコニコ動画などネット動画のプロデュースも手がけている。
http://www.sv15.com/

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