吉田豪インタビュー企画:ウーマンラッシュアワー村本大輔「ベッキーの時も少し多めに殴ってない?と感じていた」(1)

デイリーニュースオンライン

吉田豪インタビュー企画:ウーマンラッシュアワー村本大輔「ベッキーの時も少し多めに殴ってない?と感じていた」(1)
吉田豪インタビュー企画:ウーマンラッシュアワー村本大輔「ベッキーの時も少し多めに殴ってない?と感じていた」(1)

 プロインタビュアーの吉田豪が注目の人にガチンコ取材を挑むロングインタビュー企画。今回のゲストは人気お笑いコンビ、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。ソロライブを行ない、冠番組を持つなど、個人でも盛んに活躍している村本さんですが、時に“炎上”騒動を起こしてしまうことも。炎上を呼んでしまうキャラクターに迫りました!

■ネット番組では「僕みたいな人」に伝えたい

──村本さんのAbemaTV『土曜The NIGHT』が非常に興味深くて毎回観ているんですけど、かなりスリリングなことをやろうとしてますよね。

村本 でも、たまたまなんです。あえてじゃなく日々ふつうに生活してて引っかかって、ちょっと聞いてみたいなと思ったことを番組のテーマにしているだけで、それを許してくれる場所だから、あえてスリリングなことというよりも引っかかったことをやってます。なんでもお願いしたら聞いてくれる、なんでもOKな番組なんで。

──地上波的な制限も何もないし。

村本 そうですね。今日もこのあと収録で、堀潤さんと、あとシリアのジャーナリストの人が来てしゃべるんですけど、それもそこまで興味なかったんですけど、堀潤さんから、そのジャーナリストは家族がまだシリアにいるみたいで、泣きながら講演やってたみたいな話を聞いて。そういうことをTwitterとかに書くじゃないですか。たとえば堀潤さんのTwitterとかそうなんですけど、10RTとかされるだけなんです。

──そういう堅苦しい感じの話題だと。

村本 でも、僕がパンケーキを食べたとかだと500RTぐらいバッといっちゃうんですよ。だから、そういうのを無理やり聞かせるような感じですね。それが納得いかないから、なんでなんかなっていう感じで。

──そういう話の間口を広げて、興味がない人にも伝えていきたい。

村本 そうですね。それをまたバカに……って言うのも違うし、難しいんですけど、なんと言ったらいいのか……。僕は福井出身で中卒で勉強もまったくしなかった人間なんで、これを観てる僕みたいな人に伝えたいっていう感じですね。

──基本、番組のテーマはそれですよね。

村本 そうですそうです。僕みたいな人にちょっとでも興味を持ってもらえたら。それで金ももらえるし。

──ダハハハハ! 自分の好奇心を満たしつつ(笑)。

村本 いいことしかない!

──コメントを見ていると「そんなこともわからないのか!」とか村本さんにイライラしてる人も意外といますけど、村本さんは知らない人代表として番組に出てる感じなんですよね。

村本 そうです、等身大ですね。何も知らないんで。ほかの番組に出ても「バカだ」って言われるんですけど、そもそも……なんでもかんでもムカつくんですよね。好きな人の話以外は受け入れられないタイプなんかな? 

──それが番組中にも思いっきり出ますもんね。「また受け入れないモードに入ったぞ!」って。

村本 出るんですよね。自分がわからないんですよ……。最近特になんですけど、ほうぼうから「おまえ、ほんまに嫌われてるぞ」っていう話を聞かされて。

──ダハハハハ! 周りの人から心配されるレベルで(笑)。

村本 ほうぼうから聞くんです。それこそ同期の山里(亮太、南海キャンディーズ)、吉村(崇、平成ノブシコブシ)、久保田(和靖、とろサーモン)を筆頭に、いろんな先輩方からも聞いたりするんですけど。これがね、不思議なことに僕わかんないんですよね。

──なんでそうなってるのかが。

村本 わからないんですよ。「え、これあかんの?」ぐらいの感じ。それで嘘つき扱いとかされたりもして、「これ嘘ちゃうのにな」みたいな。言ったらあかんことやったみたいなんですけど、「あ、これ言ったらあかんことやったんや」みたいな。だから、ちょっと欠けてるんですよね。

──それがプラスになることもあるんですかね?

村本 うーん……。

──とりあえず『TheNIGHT』だとプラスになってる気もしますよ。そういう無邪気さというか、空気の読まなさが。

村本 ああ、たしかに。芸人がそういうことをやりだすと、「どこ目指してんねん」とか、「どうなりたいねん」とか言われるんですよね。そういうことに対しては「うるせえな」「好きにやったらええやん」としか思わないですけどね。

──政治的なこととか社会問題とか語り出すと批判されがちですからね。

村本 そうなんですよ。ひとつ大きな疑問があって、僕は政治とか全然知らないだけなんですけど、そういう世界にちょっと入ると「芸人はそういうものじゃない」みたいなことを言われたりして。なんなんだろうって。

■芸能界やお笑い界のタブーが気持ち悪い

──そっちの世界に興味を持つきっかけになったって意味で、堀潤さんとの出会いは大きかったみたいですね。

村本 大きかったですね。興味ないものっていうか、知らなかったものを知ると、知りたくなるんですよ。政治だけじゃなくて、政治もひっくるめた世の中の空気みたいな、政治のことを言った人が話を逸らしたり、そういうところに興味があるんですね。それとか、いろんな人のたとえを出されるわけですよ。(水道橋)博士とか(田村)淳さんとか。それを言われたときに、1個「ん?」というのがあって。

──どういうことですか?

村本 僕はコメンテーターっていうのは正直ちょっとスッキリしない部分が常にあるんですよね。そのタイミングで茂木健一郎さんが「日本のお笑いは終わってる、海外のスタンダップコメディは……」みたいな話をされて、それからスタンダップコメディずっと観るようになったんですよ。

──茂木さんが「トランプやバノンは無茶苦茶だが、SNLを始めとするレイトショーでコメディアンたちが徹底抗戦し、視聴者数もうなぎのぼりの様子に胸が熱くなる」「一方、日本のお笑い芸人たちは、上下関係や空気を読んだ笑いに終始し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無。後者が支配する地上波テレビはオワコン」とかつぶやいて炎上してましたけど、向こうのスタンダップコメディアンは政治的な皮肉とかを言うのが当たり前なんですよね。

村本 そうです。そこからNetflixでいっぱい観てるんですよ。

──すごい学習してますよね。そういう知識が全然なかったはずなのに、いまはスタンダップコメディの話をふつうにするようになってて。

村本 僕、ひとりでしゃべる『ウーマンラッシュアワー村本の大演説』っていうライブをやってて、でも海外は1人で6万人ぐらい集めたりするんですよ。僕は淳さんとか博士みたいにはなろうとしてもなれないですけど、僕がこのモヤモヤを解消できるのはネタかな、と。海外の強い権力が政治だとしたら、日本ってお笑い界、芸能界みたいなところがあって。何かちょっと言おうとしただけで、「いや、それヤバいんじゃない?」とか「これちょっと怒られるんじゃない?」とか言われて。

──自分にとってタブーはそっちだって実感がある。

村本 そんな感じがするんですよ。何を怖がってんの? と思って、すごい気持ち悪い感じがして。視聴者がそれを言い出してるから気持ち悪いなと思うんですよ。「あの先輩の話はやめたほうがいいんじゃない?」とか「大丈夫?」とか。そこは映画とか観る感覚で楽しんでくれたらいいのに、怖い存在みたいに言われるのが気持ち悪くて。だから、スタンダップコメディやりたいですね。

──すっかり刺激を受けたわけですね。

村本 刺激を受けて。日本でもアメリカのスタンダップコメディみたいな状況になるのは、もっともっと独裁政権みたいになって、みんな政治に文句言い出してるぐらいのときだと思うんですけど、いまはそうじゃないので。まだ早いっていうのはありますけど、海外とか興味ありますね。

──人のアドバイスとか一切聞き入れなさそうに見えて、聞くときはちゃんと聞きますよね。

村本 聞くんですけど、ちゃんと成分表示を見て、さんざん確認してから、「よし、口に入れよう」みたいな感じで。

──最初に疑ってかかって、そこからも相当確認する。

村本 そうです。これを食えるんだったら腹を壊してもいいっていうものだけ口に入れる。疑い気質ですね。

──水道橋博士に読書を勧められたときの頑なさはすごすぎましたからね(笑)。

村本 博士のあれも、なんていうんですかね……完全に読書をしないわけじゃないんですよ。チョコチョコだから、まあ読んでないレベルなので、読んでるとは言いたくないっていう変なこだわりもあって。あと、言い方。博士に「君は絵の描いてある本しか読めないのかい?」って言われたときに、じゃあ逆にこっちの理論を確立させたろうって(笑)。

■漫才のネタでも本音を込めたい

──ダハハハハ! 茂木さんの件は番組でも企画にしてましたけど、ああいうことにスイッチ入りやすいですよね。

村本 1対全員みたいなのは嫌ですね。

──茂木さんが吊るし上げられてると感じると。

村本 はい。ベッキーのときもそうですけど、「ちょっと多めに殴ってない?」みたいな感じがしたときに……強い人は弱い人の話を聞いてあげてほしいというか。でも、強い人がみんなで聞く耳持たずでボコボコにするじゃないですか。それを見てる芸人とか芸能人も、もうちょっとバランスよくしゃべれるはずなのに、一斉にそこはリーダーの話に乗っかるから。でも、逆にワクワクするんですよ、名前は出さずとも、その人たちの言ったワードを漫才に入れて、それで全国の番組でパーンと落としてやると思うというか。月末に『ENGEIグランドスラム』(フジテレビのお笑い番組。5月6日にウーマンラッシュアワーが出演した回が放送された)の収録があるんで、そのなかに入れていって。

──そういう厄介な企みが進んでるんですね(笑)。

村本 そうですそうです。

──それは地雷を踏まないで済みそうなんですか?

村本 いや、それが……どうなんですかね? 『ファンクラブ』っていうネタがあって、最後に全部の問題に正解したら「ようこそファンクラブへ」って言うんですけど、そのなかで「シリア情勢でもなく茂木健一郎のTwitter、北朝鮮の核開発でもなく茂木健一郎のTwitter、被災地の復興でもなく茂木健一郎のTwitter、テレビのネタのチョイス終わってる」っていう感じで話が進むんで。フジテレビの番組でフジテレビの番組のこと言ってるんで、それがドキドキニヤニヤみたいなのはありますね。

──そういうネタってボクみたいな立場でいじるんだったらまだわかるんですけど、村本さんは完全に当事者じゃないですか。そういう番組に出て、何度も共演している側の人がそこに踏み込むのはハイリスクですよ。

村本 どっかで諦めてるのかもわかんないですね。よく太田(光)さんのことを考えたりするんですよ。太田さんとか結構ハチャメチャ言うじゃないですか。それでちゃんと成り上がるから、すごいなと思って。僕はまだケンカする準備もできてないけど、とりあえず特攻するような感じで(笑)。やってることはなんの生産性もないのかもわかんないです。でも、漫才でバカみたいなやり取りができないというか、一発本音を込めてからじゃないとしゃべれなくて。バイトリーダーとか『THE MANZAI』で優勝したネタも、何か言いたいことがあってやってて。今回は芸能界の気持ち悪い空気を扱いたいんで、そうじゃないとネタができないんですよ。快便したいですね。

──厄介な性分ですよね。

村本 厄介なんです。だからあんまり上手に回らないんですよ。

■村八分になったら八つ墓村みたいにやってやる!

──実際、いまお笑いの世界で村本さんがいろいろ批判されてるって噂はちょっと聞いてたんですよ。

村本 そうなんです。でもね、なんか面倒くさくなってきて。言ってもないことを言ったとか、嘘じゃないことを嘘とか、芸人ってそういうとこあるんですよね。特にすぐ広まって、最近楽屋で●●さんが「岡村さんがこの前、村本のことこんなこと言ってたで」って言ったんですけど、「え、そんな事実ないですよ!」「マジで? 岡村さんにまで広がってんで」って言われて。そんなのひとりひとりに対して「あれ本当はこうなんです」って言うのも時間の無駄やし。極端な話、山里も久保田も、僕がケンカするヤツなんて俯瞰で見たときに加藤紗里と濱松恵? あれぐらいのもんにしか見えない気がして。そうなったとき、闘う相手はもっと上じゃないと。

──……発想がテロリストみたいになってきてますよね(笑)。

村本 そうなんですよ! 最近、RGさんがお話を聞いてくれて、「表立っては支援できませんよ」って表明されて去って行くんですけど。ムラ・ジョンウンさんみたいな感じで言われるんですけど、僕のなかではムライ・ラマなんですよね。

──なるほど、もっと平和な活動をしているつもりなのに(笑)。

村本 そっちなんですよ。僕はどっちかっていうと言ったらあかんことなんかも、「言ったらあかんこと言うなよおまえ、ハハハハハ!」とか、「仕事減ったやないか、ハハハハハ!」とかで終わらせたいのに、何を言われようがそんなにガードすんなよ、みたいな。ちっちゃい村ですよ。最終的に村八分になったら、八つ墓村みたいに頭にセンターマイク挿して全員やってやりますから!

──ダハハハハ! 発想が完全に津山三十人殺しになってますよ!

村本 この世界に入ってからじゃないんですよ、子供のときからそんな感じやったんで。修学旅行も別行動でしたし。今度、『島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭』で沖縄行くんですよ。そうなったときに普段の関係性が出るんで、空き時間とかいつもひとりなんですよ。それはそれで、その間に……。

──何をするつもりなのかはわからないですけど……。

村本 どうでもいいんですよ、お笑い界は。

──『The NIGHT』とかでも、ふつう芸人仲間を呼ぶとき、誰も知らない後輩とか呼ばないじゃないですか。ああいうのを見ると、他の芸人さんと比べて人間関係が下手なんだろうなとは思いますよね。

村本 ホントそうです、誰も知らない後輩を。堀潤さんもNHK辞めてきてるし、茂木健一郎さんもああいう感じの人だから、類は友を呼ぶんでしょうね。

──はぐれ者みたいな人たちが。

村本 これからどうなるんですかね……。

<次回に続く>

プロフィール


ウーマンラッシュアワー

村本大輔

村本大輔(むらもとだいすけ):1980年、福井県出身。様々なコンビを経て、2008年に中川パラダイスとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。2013年にはTHE MANZAIで優勝する。個人でも幅広く活動し、2015~2016年にはラジオ『ウーマンラッシュアワー村本大輔のオールナイトニッポン』のパーソナリティを務め、現在Web番組AbemaTV『ウーマンラッシュアワー村本大輔の土曜The NIGHT』、『Abema Prime』(https://abema.tv/)のMCを務めている。ソロライブ『ウーマンラッシュアワー村本の大演説』を全国で開催しており、7/2(日)には大阪・なんばグランド花月にて開催する。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の空手★バカ一代』などインタビュー集を多数手がけている。コラム集『聞き出す力』『続 聞き出す力』も話題を呼んだ。

「吉田豪インタビュー企画:ウーマンラッシュアワー村本大輔「ベッキーの時も少し多めに殴ってない?と感じていた」(1)」のページです。デイリーニュースオンラインは、村本大輔ウーマンラッシュアワー吉田豪連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧