【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第26話 (1/6ページ)

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第26話

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【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第25話

■文政八年 玉菊灯籠の夏(1)

「花魁」

暗い部屋で二人きり、佐吉が哀しい目をしてみつを呼んだ。

「ごめん、おいらア、もう会えねえ」

なんで、と訊こうとした時、佐吉がくるりと背を向けて着物を床に散らした。

闇に浮かんだ男の白い背中を見て、みつは思わず呼吸(いき)を呑んだ。

男の広い背中一面に禍々しい大きな龍が一頭わだかまって、じっとこちらを睨めつけている。

歌川国芳「禽獣図会 龍虎」(部分)ボストン美術館蔵

「触って、」

と佐吉が言った。

「花魁のために、こいつはここに宿ったんだから」

みつは恐る恐る手を延べた。

細い指先がひしめく龍鱗に触れた瞬間、龍の絵がばりばりと音を立てて背中から剥離し、あっという間に空間に立ち昇った。

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