病を治すという奇跡の水が湧き出るルルドの泉の治癒率と本当の奇跡 (2/3ページ)

心に残る家族葬

その後カトリック教会による厳正な審査が行われるが、2009年3月時点で、カトリック教会が詳細に検証した結果、「奇跡」として公認している事例は約2500件の治癒例のうち68件である。しかし注目すべきは、奇跡とはみなされなかったものの、治癒したという例ですら、この130年でたったの2500件であることだ。年間500万人の奇跡の聖地でのこの数は希少と言わざるをえない。



■ルルドの泉には医学的な治癒とは無関係な救いと癒しが存在するのかもしれない

ルルドは確かに科学を超越した神秘的な土地であるようだ。比較文化史家 竹下節子は病人を中心にプログラムされているというルルドの非日常的な状況において、病人が変性意識状態に陥り医学では説明できない治癒をもたらすことはありうると述べている。カトリックの認定とは別に一定数の治癒が報告されていることもまた事実なのである。

しかし、それらを考慮しても巡礼者数からみれば治癒率が特別高いとも言えない。筆者はそれにも関わらず世界中からルルドを訪れる人が絶えないのは、医学的な治癒以上の救いと癒しがあるのだろうと思う。

先ほども書いたが、ベルナデッド自身が泉には見向きもせず、病院で治療しているし、そもそも聖母マリアはベルナデッドに万病を治癒する泉などとは一言も言っていない。マリアはベルナデッドに「泉の水を飲んで洗いなさい」と言っただけである。竹下はこの言葉は病気を治すといった実在的な意味ではなく、宗教的な浄めの意味であると指摘する。

奇跡を求めてルルドに訪れる多くの病人、怪我人のほとんどは治癒することはない。それでも人々は満ち足りて帰路に着くという。21世紀の今なお、最大の巡礼者数を誇っていることがそれを証明している。それでは巡礼者は何を求めて聖地を訪れるのか。

■本当の「奇跡」

ベルナデッド最後の数年は病床につき苦痛に満ちたものだったという。死に至るまでの過程も安らかとは言い難く、奇跡の泉を涌かせた聖女の病気は最後まで治癒することなく、彼女はただひたすら神と聖母への祈りの中で帰天した。35歳の若さだった。

筆者は以前、若くして亡くなった少女の話を読んだことがある。少女は危篤状態の時、ひたすら神に祈りを捧げた。

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