【小説】永すぎた春/恋愛部長 (4/6ページ)
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恋愛部長の「ダメな恋ほど愛おしい」
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別れ
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彼氏
「奏多、私の新しい恋は素敵なの! あなたもよろこんでくれるよね!」
ウッカリすると、そう言い出してしまいそうで、真由はわざと不機嫌な顔をつくって、奏多に背を向けなければならないくらいだった。
奏多がそういうところは鈍感なのが救いだった。
どうしよう・・・・・・いや、別に、ただキスされただけ。いや、された、というか、自分がそうしてほしいという顔をしていたのか。海外生活の経験もある米澤にとっては、キスくらい挨拶程度のことなのか。あまり深く考えない方がいいのだろうか。
真由は、その日は、ぐるぐると米澤のことばかり考えて眠りについた。
米澤との仲は、それからとくに進展するわけでもなかった。だが、真由の中では、米澤の存在が大きく膨らみすぎて、徐々に、奏多と暮らしていることを米澤に隠していることに、とてつもない後ろめたさを覚えるようになっていた。
「女は結局、好きな男にだけ操立てしたいのだ」と真由はしみじみと思った。
本当だったら、後ろめたさは、奏多に感じるべきなのに。米澤に対して、嘘をついていることがこんなに心苦しいなんて。
早く、自由になって、潔白な状態でこの恋を進めなくては!
真由は毎日家に帰るたびに、そう思った。奏多に触れられるのも徐々に避けるようになっていたから、奏多も何か気づいているかもしれなかった。でも、真由にとっては、そんなことを気遣う余裕さえなかったのだ。心の中は別の男のことでいっぱいだったから。■2人をつなぐものは何もなくなった
ある朝、真由は、ついに奏多に切り出した。
「同居を、解消しない?」
さすがに、好きな人ができたから別れたい、とまでは言えなかった。
「5年もズルズルしてきたけど、そろそろお互いの生活をもっと大事にしたほうがいいと思う。親も、心配するし・・・・・・」
奏多は、相変わらずテレビのほうを向いていて、何も言わなかった。
「あと2か月で、更新時期だし、私は別のマンション探すから」
一方的に物言わぬ背中に言葉をかけた。奏多は何も反応せずに、ただ、小さくうなずいたようだった。