猫の気持ちをモニター化…「ウェアラブルEXPO」近未来レポート

デイリーニュースオンライン

ブラザーのHMD『AIRScouter』(写真/川口友万)
ブラザーのHMD『AIRScouter』(写真/川口友万)

 歌う服に動物のSNS、脳波で運転する自動車、そんな未来を生み出すのがウェアラブル=着るという概念のIT技術だ。『ウェアラブルEXPO』(2015年1月14~16日・東京ビッグサイト)で、そんな最新技術を覗いてきた。

 ウェアラブルという聞いて、ガジェット好きがすぐに思いつくのはメガネ型のデバイスだろう。小さな透過型モニターのついたコンピュータ端末で、視界にコンピュータの情報が表示される。

 HMD=ヘッドマウントディスプレイと呼ばれるものだ。この分野、製品が現れては消え、現れては消え、うたかたの夢のような淡いものだと思う人も少なくないと思うが、ようやく火がつく。一般向けを期待する人も多いとは思うが、まずは実務分野から普及が始まりそうだ。

ムラタシステム『ゆびキタスピッキング』のHMD

 まずは物流関係。現在は膨大な貨物の管理をICタグとリーダーで行っている。タグを読み取り、画面を確認する作業が必要で、量が増えるととても面倒だ。そこで確認画面をHMDに載せてしまう。リーダーは手袋型にする。

 すると手で荷物に触ると視界に荷物がどこに送られるどんな荷物なのか? といった情報が表示される。チェックに手を使わないので、ハンズフリーピッキングと呼ぶ。いちいちリーダーを持ってタグにタッチし、画面で確認という作業がなくなるわけだ。

 医療分野での期待も大きい。薬剤の仕分けはミスが許されないだけにチェックに手間がかかる。これも薬の仕分け棚にICタグを埋め込み、同様に手袋型のリーダーとHMDを使えば、視線の移動なく薬剤を仕分けできる。

 内視鏡の手術などでは手術箇所とモニターが離れているので、横目でモニターを見ながら手術するという危ないことになっていたが、これもHMDで解決する。手術箇所と内視鏡の映像がHMD上で合成されるので、手術の作業ストレスが軽減する。

 ウェアラブルという言葉通りに、布のデバイスも開発中だ。帝人(株)のポリ乳酸圧電ファブリックは、ポリ乳酸でできた繊維に、電気を通す=導電性の繊維を織り込んだもの。

ポリ乳酸圧電ファブリックで作られた割烹着。なんで割烹着? サイバー小保方さん?

 ポリ乳酸は圧力がかかると小さな電流が流れる。それを導電性繊維を通じてコンピュータに送り込み、データ化する。この布で作ったボディスーツを着て動けば、そのままその動きがコンピュータ上に再現できるわけだ。ものすごく精緻に動きのデータを拾うことができるので、超リアルなバーチャルボディが出来上がる。これからは役者もCGになってしまうんじゃないか?

 医療にも利用できる。超早期診断技術開発プロジェクト(産業技術総合研究所、名古屋大学他)では、ポリ乳酸圧電ファブリックをシーツにし、寝ている間の動きをモニタリング、病気の兆候や老人であれば床ずれができそうかどうかを判別する技術や胸に巻いて呼吸の状態をモニターする技術などの研究を行っている。

グンゼの発熱する靴下

 グンゼは導電性繊維を使ってヒーターを埋め込んだ靴下を試作した。電池をつなげば、温かくなる靴下だ。洗濯もできるし、耐久性もある。洗濯機でガンガン洗っても性能は落ちない。

グンゼの導電性繊維に発光ダイオードを埋め込めば、光る服に!

 圧力センサーを組み込み、ピアノの鍵盤のように押すと音が出る服も作ることができる。発光ダイオードを組み込めば、動きに合わせて光の強さが変化する服もできる。導電性繊維の可能性は未知数だが、まずはアートだろう。メディアアートのジャンルで、新しい使い方が期待できるのではないか?

ペットとコンピュータが融合? ペットの声を聴くデバイス『Anicall』

『Anicall』はペット用のウェアラブルデバイスだ。Bluetoothを使った通信端末で、心拍数やペットの動きをモニターするセンサーが内蔵されている。これをペットの首輪につけて、スマートフォンでアプリを起動させるとデータが送られ、ペットの健康状態はもとより、ペットの感情の動きもモニターし、「お腹が減った」「散歩に行きたい」「放っておいてくれ」などのメッセージを表示したり、Anicallを付けたペット同士がデータをやり取りし、SNSを作ることも。

畜産業界向けのデバイス『Cowcall』

 以前、バウリンガルという犬の鳴き声を翻訳するオモチャが売られたが、その圧倒的な進化版である。牛の管理に使う『Cowcall』もあり、スマートフォンをかざすと生体管理情報が表示される優れものだ。

 脳情報通信融合センターでは、脳波を使って自動車のシミュレーターを操作する研究を行っている。脳波での完全な運転よりも、運転中の脳の動きを安全技術に利用できないか? という研究で、事故を起こす場合の脳の状態を測定したり、居眠り運転が起きる兆候を分析したりする。自動運転技術と組み合わせれば、乗員の状態に応じた走行が実現する。

 キャズムという経済理論がある。変革には閾値があり、それが普及する前夜には新技術が大量に現れ、淘汰されるという。爆発的な普及が始まる前にある溝がキャズムだ。キャズムを超えた技術が世界に受け入れられる。ウェアラブルはこれからの技術だ。まさに今がキャズムであり、果たしてウェアラブルの未来が来るのかどうかがこの1~2年の間に試されることになる。

(取材・文/川口友万)

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