入居者は生活保護…激安200万円物件に潜む不動産投資の罠

デイリーニュースオンライン

写真はイメージです(Photo by mxmstryo via Flickr)
写真はイメージです(Photo by mxmstryo via Flickr)

 不動産投資はいつの時代も「着実で堅い」資産運用として人気だ。最近では、サラリーマンの“副業”として、200~500万円台の格安の中古マンション物件を買い、賃貸に出すといった方法がマネー誌等で紹介されている。

 だがそこには思わぬ落とし穴がある。神奈川県郊外で中古の団地1室を賃貸に出しているというA氏(会社員・30代後半)が語る。

借主が児童ポルノで逮捕、大家として住民に謝罪

「家賃はちゃんと支払って貰ってます。ゴミ出しのマナーも、近隣住民とのトラブルもありませんでした。でもね入居者さんにちょっと問題があってね……。頭が痛いですよ」

 A氏がいう入居者の“問題”とは、入居者がネット上で児童ポルノを約数万点を流布させたとして、児童ポルノ法違反、わいせつ図画頒布などの罪で逮捕されたことだ。逮捕当日は数台の警察車両がやって来て、警察官がパソコンなどを押収した。近隣では大騒ぎだったという。

「しばらくして新聞沙汰になり、管理を任せている不動産会社から『他の住民から苦情が来ている』と連絡があった。ま、要は、『児童ポルノで捕まるような人を追い出せ』『小さい子がいるうちは怖い』『大家として責任取れ』というものです。私自身が悪さしたわけではないんですが、住民相手に頭下げてどうにか収めました。何とも不快でしたよ」(A氏)

 不動産会社の社員と一緒に頭を下げるA氏は、事情をよく知らない住民からは入居者であるわいせつ犯人の“家族”と思われてバツの悪い思いをしたと話す。そもそもA氏は神奈川県内にある築50年近くの団地を210万円で買い取って、それを月4万円の家賃で賃貸に出していた。固定資産税もあるが6年で元が取れるとふんでいた。しかし、この児童ポルノで捕まった入居者が退去した後、次の入居者がなかなか決まらないという。

曰く付きの物件の借り手が付かず、家賃を下げると赤字に

 入居者が決まらないと当然収入にはならない。A氏は210万円のこの物件を住宅ローンで購入したので家賃収入が入らなければその負担も当然大きなものとなる。だがわいせつ犯を出したいわく付きの物件を「月4万円」で借りようという人はあらわれない。家賃を下げるしかない。

「今は月3万円で入居者募集をかけてますが、なかなか決まりません。赤字です」(同)

 東京近郊、大阪郊外の築30年~50年程度の中古マンション……といえば聞こえはいいが「団地」を1室買い取、賃貸に出す不動産投資は、一見、確実な投資手法だが、このように思わぬリスクもあるのだ。

物件を300万円で購入、生活保護受給者に賃貸すると……

 大阪府郊外で築40年の団地の1室を賃貸に出しているB氏(40代前半・会社員)が語る。

「リフォーム代込みで大阪府郊外の団地1室を350万円で買いました。月に約4万円の家賃で7年ほどかけて投資分を回収できたらいいかなと。でもなかなか入居者が決まらない。それで生活保護受給の人に貸したんです。家賃も確実に入ってくるので。そこまでは問題はなかったのですが……」

 このB氏が購入した団地の1室は今でこそ300万円とリーズナブルな価格だが、バブル期には3000万円もの値段がついた物件だった。当時からここに住む住民には1部上場企業勤務、医師など高収入の人も多い。賃貸で入居する生活保護受給者とはやはり折り合いがよくないのかもしれない。入居早々、住民自治会でトラブルが発生した。

「自治会からは、『団地で皆が総出で行なう掃除に出てこない』『ゴミ出しのルールを守らない』『(住民自治会で禁止されている)勝手に猫を飼いだした』などの苦情が寄せられました。大家として謝罪し、入居者にも話しましたがどうにもわかってくれません」(B氏)

 B氏が近隣住民に謝罪した際、1部上場企業勤務の社員という住民自治会の役員からこう言われたという。

「所詮、生活保護受給者だからな……。バブル期とはいえ3000万円を支払える人間とは価値観は違うよ。今後、この団地の賃貸は生活保護受給者には貸さないという規約をつくらなければならないね」

大損! 驚くほど汚され150万円かけてリフォーム

 千葉県郊外の団地1室を賃貸に出すC氏(40代前半・自営業)も300万円の物件を家賃4万円で、就労目的でやって来た中国人に賃貸に出した。2年後、退去した際、備品として置いていた家具やガスコンロは持ち去られ、部屋の中は驚くほど汚されていた。退去時、修繕費を請求したがそのまま帰国され、連絡も取れない。

「退去後、リフォーム代金に150万かかりました。中華料理ばかり作っていたのか、キッチンはもちろん、部屋中、油汚れがひどかった。臭いもとれませんよ。300万円の物件なのに、これでは450万円もかかっている。もう手放そうかと思っています」(C氏)

 こうした築年数の古い郊外の団地を賃貸に出すリスクについて大阪府内の不動産業者はこう警鐘を鳴らす。

「職業や国籍に関係なく、安価な不動産の賃貸は“客層”は自ずと知れています。500万円までの物件で賃貸を行なう際、行儀悪い客層に大家さんがどこまで耐えられるかです」

 入居者の振る舞いはすべて“大家さん”である貸主にかかってくる。筋の悪い入居者にどこまで寄り添えるか。これがストレスになるようならば不動産ではなく利回りのいい金融商品での資産運用のほういいのかもしれない。「固定資産税」「リフォーム代」などもかからずに済むからだ。いずれにせよ“楽で着実な”資産運用など存在しないといったところか。

(取材・文/川村洋)

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