ファウルボール直撃事故で再燃する「スポーツ観戦は自己責任」論

デイリーニュースオンライン

写真はイメージです
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 ここ最近、米メジャーリーグでファウルボールが観客に直撃するアクシデントが立て続けに起こっている。日本でも同じような事故が頻繁に発生し、訴訟問題にまで発展することもあるが、これをきっかけに一部のネットユーザーの間で「スポーツ観戦は自己責任か」という議論が再び巻き起こっている。

アメリカでは意外にも「自己責任」で賠償責任なし?

 メジャーリーグでは、7月10日に行われたレッドソックスとヤンキースの一戦で三塁側ベンチ付近の席で観戦していた女性の額に打球が命中。同6日のブルワーズとブレーブスの試合でもファンにファウルボールが当たる事故が発生していた。

 今回はいずれも大事には至っていないが、訴訟大国である米国では「ファウルボール訴訟」が多発。だが、アメリカは意外にもスポーツ観戦に関しては「自己責任」の文化。「危険があることを予め承知してスタジアムに来る」として、観客がケガしても球団側は免責されるケースが大半なのだ。

 アメリカのスタジアムは基本的に防護ネットがバックネットにしかなく、強烈なライナー性のファウルボールが飛んでくる内野席は無防備な状態。いくら打球命中のアクシデントが起きても防護ネット対策が進まないのは「観戦は自己責任」の慣例があることが影響している。観客席以外でファウルボールによって負傷した場合は訴えが認められることがあるが、基本的には裁判しても勝ち目はない。

 日本でもファウルボールなどで負傷した観客が訴えを起こした事件は少なからずあり、同じように「自己責任論」によって原告側の訴えは全て棄却されていた。2008年に宮城県の男性がファウルボールが目に直撃したことで視力が0.3から0.03に落ちたケースでも、裁判所は「球場の設置者にとっては不可抗力」「臨場感も野球の魅力の一つ」という解釈を示している。

 これについて、国内外のネットユーザーの間では以下のような賛否両論が巻き起こっている。

「娯楽なのに失明しても自己責任って…」
「これをいちいち認めてたら何にもできなくなる」
「球場側は悪くない、歩道で交通事故が起きたら道路管理者が悪いと言ってるようなもの」
「アルコール売っておいて観客に『ボールに注意してください』と求めるのは無理筋」
「防護ネットだらけで臨場感がなくなったら楽しくない」

球団側が敗訴…全国初の判決で業界に衝撃

 さまざまな意見がありながらも根本的には「自己責任」とされているが、今年3月に全国で初めて原告の訴えを認める判決が出たことで業界に激震が走った。

 2010年に日本ハムVS西武の一戦を一塁側内野席で観戦していた女性にファウルボールが直撃し、女性は顔面骨折、右眼球破裂の重傷で右目を失明。主催者の日本ハム球団、施設所有者の札幌市などを相手取って約4650万円の損害賠償を求めた。

 現場の札幌ドームでは、2006年に臨場感を高める目的でバックネット以外の防護ネットを撤去。ファンには好評だったが、それ以降は年間約100件のファウルボール事故が発生していた。それを鑑みた札幌地裁が「球場の設備は安全性を欠いていた」と判断。日本ハムなどの被告側は判決を不服として控訴している。

 今後、もし被告側が完全に敗訴するような事態になれば、長らく野球界に浸透していた観客の「自己責任論」が崩壊することになるだろう。その場合は安全対策の徹底によって臨場感が犠牲になることが予想され、新たに物議を醸すことになりそうだ。

プロレスでも観客負傷で訴訟問題

 野球以外のスポーツでも同じような騒動が発生している。

 2005年にプロレス団体「プロレスリング・ノア」の試合で、選手がフェンス越えの飛び技を繰り出したところ観客の女性にカカトが直撃。全治2カ月の大ケガで言語障害も残ったため、女性側は「選手が所定の場所以外で跳び技を出すことを禁じるなどの安全配慮の義務を怠った」として、団体側を相手取って約1000万円の慰謝料を求める民事訴訟を起こした。

 また、2010年には全日本プロレスの試合で場外乱闘が2階席にまで発展。混乱状態の末に選手が1階席に突き落とされる事態となったが、逃げ遅れた観客の女性が下敷きとなって左脚を骨折した。治療費を団体側が負担して当初は和解ムードで穏便に話が進んでいたが、長時間の歩行が困難になるなど後遺症が判明したために女性側は約4,400万円の損害賠償を求めて提訴した。

 新日本プロレスなどのメジャー団体をのぞけば大半のプロレス団体は経営が厳しく、訴訟リスクは悩みのタネになっている。

 スポーツ観戦に「ゼロリスク」を求めるのは難しい気もするが、事故に見舞われた観客の憤りも理解できるだけに難しい問題だ。

(取材・文/佐藤勇馬)

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