堂々たる体躯、鋭い牙、腹の底まで響く吠え声…こうした特徴はオオカミを恐ろしい敵と想像させるには十分だ。オオカミが人間を襲うことなど滅多にないが、それでも彼らは畏怖され、様々な人狼伝説が生まれてきた。
中世や近代において、人狼の疑いをかけられた者は魔女のように裁判にかけられ、拷問によってその正体を自白させられた。実際に獣のような凶暴さに取り憑かれた連続殺人鬼である者もいれば、人との交わりを避けて暮らす狂人もいた。いずれの場合でも、彼らの存在は周囲を恐怖に陥れてきたのだ。
■ 10. パリの狼
1450年、パリは現在のような大都市ではなかったが、西洋世界の主要な街であった。周囲を囲む壁は周辺の敵から街を守るためだ。危険な敵の中には凶暴な動物もいた。
その冬、飢えた狼の群れが街に侵入し、パリの住人40人を殺害した。狼は赤毛だと伝えられており(スペイン北部に住むイベリア狼と思われる)、その群れのリーダーは「コートード(切り尾の意)」と呼ばれ恐れられた。
すぐに群れの駆除が決定され、武装した住人は狼に襲いかかった。狼はノートルダム大聖堂の前に追い詰められ、全匹が息絶えるまで槍と石を投げつけられたという。
■ 9. ギシンゲの狼
1817年、スウェーデンに狼の子供を捕まえて、柵の中で飼育していた人物がいた。ある日、この狼は逃げ出し、「ギシンゲの狼」として非常に恐れられるようになる。1820年12月30日から翌年の3月27日にかけて31人を襲い、12人の命を奪ったのだ。