(おことわり)旧作映画の映画表現に現代では一部不適切なものがあります。作品の時代背景やその意図を検証することが目的のため、文中の表現はそのままといたしました。何卒ご理解いただければ幸いです。(編集部)
あの映画に隠された、禁断の魅力とは? 現代の「神話」の深淵に迫る!
第2回 つまづきを長所に変えて~『ダンボ』のたどった苦難の道(前編)
「悪い子はサーカスに売っちゃうぞ!」
言うことを聞かない子供に対して、かつて親はそう言って脅したものです。
この脅し文句の正確な由来は不明ですが、おそらく19世紀末から20世紀にかけて、娯楽としてのサーカスが盛んになった時期に生まれたものだと思われます。「気をつけないと、ジプシーがお前を捕まえてサーカスに売っちゃうぞ!」という言い回しもあるそうなので起源はヨーロッパにあると見ていいでしょう。しかし、この文句はまたたく間に世界に広まり、もちろんアメリカでも定着しました。アメリカの場合、サーカスは各地を転々と巡回する見世物興行で、また、サーカスにはサイドショー(フリークショー)が付き物だったことから、「サーカスに売っちゃうぞ!」と脅す親には事欠きませんでした。つまり「サーカスに売っちゃうぞ」というと、アメリカの場合「どこか遠くの見知らぬ土地に連れ去られる恐怖」と「フリークとして見世物にされてしまう恐怖」の両方を子供に植え付ける言葉だったというわけです。この言葉は日本にも輸入されたので、年配の人の中には聞き覚えのある人がいるかもしれません。どのタイミングで日本にこの言葉が来たのかはわかりません。可能性としては、翻訳小説などから広まったのではないかと考えられますが、どうなのでしょう。
先ほど「サーカスにはフリークショーが付き物だった」と書きましたが、これは『ダンボ』に登場するサーカスにおいても同様です。母親とたわむれていたダンボが、心ない子供たちに嘲笑される場面がありますが、このシーンの背景にサイドショーの看板がいくつか確認できるのです。細かく描きこんではありませんが、謎めいた美女と巨大魚のようなもの、それに怪力男の看板が見えます。