近年グローバル(地球規模)、ダイバーシティ(多様性)など普遍的、包括的な世界観が叫ばれている。対して民族や国土、国境といった言葉には「ナショナリズム」として閉鎖的で狭量な印象が与えられがちである。「○○族」「○○国人」から「地球人」としての意識変換が望まれている。確かに環境、貧困、民族・宗教紛争など、世界が直面する問題の解決は急務であり、そのために自国中心主義的な発想では乗り切れないかもしれない。しかし「地球人」という概念は、日本人として生を受けた者として、その死生観において簡単には割り切れないものがある。
■「地球人」か 故国、故郷か
「千の風」のように死んでも天地自然のあらゆる場所に自分はいるという汎神論的な宗教観は、まさにグローバル的、現代的であるといえる。散骨を望む人が増えているのも母なる地球を覆う大いなる大海へ還るイメージが好まれるのだろう。「地球人」という概念で捉えれば、終の棲家は世界のどこでもよいということになる。国土や民族を超越した普遍的な価値観は必要だろう。その一方で、人生の最期を故国、故郷で迎えたいという思いも自然なものだと思われる。生まれ育った故郷には特別な思いがあるものだ。故郷を追われた人もいる。思い出したくもない人もいるだろう。それでも人生の最期は故郷で迎えたいという人は少なくないのではないか。故郷には具体的な記憶がある。街並み、自然、人々。故郷の記憶、空気、においは、それまで生きてきた自分自身そのものである。それに比べて「地球人」はあまりに広く観念的ではないか。四方を海で囲まれた日本で生れ育った我々には尚更である。
■地球人をを意識するには少々無理がある
本宮ひろ志の漫画「サラリーマン金太郎」にアラブ出張中の主人公の同僚たちによる会話がある。
「しかし坂本龍馬か…何だろうな。この砂漠を前にしてその名前を聞くと、心がなごむよ」
「日本人なんだろうな、俺たち…」
「日本を出て日本人を感じるか…地球人はやっぱり理屈だ」(本宮ひろ志「サラリーマン金太郎」)
日本から離れれば離れるほど日本を感じる心性は理解できるものだ。「地球人」は知的な概念、観念である。「地球」の概念は普遍的過ぎるのだ。
曹洞宗の道元や浄土真宗の親鸞が故郷に帰って人生の幕を引いた理由
2021.10.27 19:00
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