AV業界は自滅する?大規模なガサ入れをした警察の"真の目的"とは【2】 (3/3ページ)
■労働者派遣法の適用は妥当なのか?
今回のケースでは労働者派遣法に抵触するという理由になっているが、この点もAV業界の存在を根底から否定するものだ。実際にどういう結論になるかは裁判が終わってみなければ解らないが、仮にこれで有罪判決になってしまうと、セックスワーク全般に流れ弾が行く可能性がある。
というのも、労働者とは法律で定義されており、何らかの事業に使用され、それによって賃金が支払われる立場の人間を指す。よって、AV女優や風俗嬢は「個人事業主がマネージメントの部分を外部委託している」という芸能タレントにも似た契約内容になっているのだ。この部分を警察が「実質的には雇用関係だろう?」と突いて来たという事は、AVや風俗の業界の建前など一切考慮してくれないという事である。したがって、世にあるほぼすべてのセックスワークが同じ事をやられても不思議ではない(というか現に風俗の業界はすでにヤラれ尽くしている)。
そして、この点については地裁レベルではすでに決着が付いていると言っていい。ここ十数年の間に似たような裁判はいくつか起きているのだが、その殆どでプロダクションがAVモデルを募集・派遣または紹介する行為は「公衆道徳上有害な業務に就かせる目的」であり、「労働者派遣法ないしは職業安定法に抵触する」、ようは「AV=公衆道徳上有害な業務である」と結論付けられているのである。判例がすべての世界であるから、これらを覆すのは難しいだろう。
この「何を以て有害と判断するのか」という点については、実はセックスワーク業界が戦う余地のある部分ではあるのだが、今の状況を考えると、おそらく一枚岩となって法の改正へ向かうといった手段は実現できないだろう。仮にそう動こうにも味方がいなさ過ぎるし、今からセックスワーカーの為に政治家や知識人が火中の栗を拾いに来てくれる事など期待できない。
仮に「エロ=有害という考え方でいいのか」という点を議論し、また法に反映させたいと思うならば、AVも風俗もマンガもアニメも映画もTVも芸能も小説も、ありとあらゆるエロに関する業界がひとつにならねば難しい。間違っても「小説や映画は芸術だからOKだけどAVやアニメは」といった選り好みをさせてはならないし、また"相手の分断作戦"に乗る事もあってはならない。
だがしかし、その仲間に入れて貰うには、AV業界はヨゴレ過ぎるのである。AVが上に挙げた業界の仲間入りをさせて貰うためには、もっと世間一般の常識が通用する業界にし、AV業界でしか通用しない村ルールや、アウトロー要素を極限まで減らす必要がある。果たして今のAV業界にそれが出来るのだろうか。
Written by 荒井禎雄
Photo by StephaniePetraPhoto