田中角栄 日本が酔いしれた親分力(5)法案成立のため敵の懐にも足を運び (1/2ページ)

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田中角栄 日本が酔いしれた親分力(5)法案成立のため敵の懐にも足を運び

 しかし、田中の前に、大蔵省が立ちはだかった。大蔵官僚たちは猛反対した。

「税金を特定の目的に使う『特定財源』は、予算配分の権限を侵されるから、断固として許すわけにはいかない!」

 石油・運輸業界も、これに強く反対した。

「増税は許さない」

 田中は、抵抗が激しければ、よけいに燃えた。34歳の若い血がたぎった。

〈必ず通してみせる〉

 52年4月、田中は手始めに、旧道路法の全面改正を図る“新道路法”を衆議院に提出した。この法案は6月2日、参議院本会議で可決・成立し、10日に公布となる。

 次は、懸案のガソリン税法である。52年の第15回国会に提出されたこの法案は、年内に衆議院本会議を通過したが、参議院で審議中、衆議院解散となり、いったんは廃案となった。だが、これに情熱を傾ける田中は翌53年(昭和28年)6月、衆議院に再提出する。

 依然として強い反対意見に、田中は衆議院建設大蔵連合会で、口髭をふるわせるようにして、ほとんど1人で熱弁をふるった。

「今まで表日本偏重の予算投下が長い間続けられ、裏日本とか、裏日本から表日本を横断する道路などが未改良になっております。これを一切整備しなければ、道路整備は終わらない」

 田中の脳裏には、雪に閉じこめられた越後の人たちが交通事情の悪さに苦しむ姿が焼きついていた。だからこそ、ふるさとの格差是正に執念を燃やしていた。

 反対派から攻撃があると、煙に巻いた。

「1人あたり道路費に出している額は、ちなみに、インドが39円でして」

 小学校の先生・草間道之輔から言われたとおり、田中は眼に入る数字をすべて記憶していた。田中の記憶力は群を抜いていた。

 しかし、大蔵省の追及はさらに続いた。

「ガソリン税法は、建設省の予算折衝のお助けをする法律にすぎないような気がしますが」

 田中は、右の拳を振り上げ、顔面を紅潮させ、飛んでくる矢をかわした。

「建設省のためというような甘い考えは持っておりません! 日本の産業の根本的な再興をするためには道路整備以外ないのです!」

 田中は逆に、大蔵省側の委員の攻撃にかかった。

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