世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第208回 保護主義の時代、来たれり (2/3ページ)
穏やかなグローバリズムから、厳しいグローバリズムまで、順番に並べると、
(1)モノの移動の自由化(関税緩和、撤廃)
(2)サービスの制度の統一
(3)資本移動の自由化
(4)労働者移動の自由化
(5)法制度の統一
となるだろうか。
もちろん、穏やかなグローバリズムであるモノの移動の自由化にしても、例えば「農業」とそれ以外の製品を同じ土俵で比較するのは間違っている。何しろ、農業が自由化され、国民農業が崩壊すると、その国の食料安全保障が崩壊する。すなわち、何らかの事情で国民が「飢える」確率が高まる。
ちなみにEUの場合、先の(1)から(5)で言えば、最も厳しい「法制度の統一」についてまで踏み込んでいる。イギリス国民はブリュッセル(EU本部所在地)の官僚たちが考案した、不可解な法律の受け入れを強いられていたわけだ。
メイ首相はEUから「完全撤退」すると表明したが、別に鎖国するわけではない。グローバリズムの各段階の「どこまで戻すか?」について今後、検討、交渉していくことになる。
メイ首相は演説において、部分的にEUに残るような中後半端なことはしない、EU域内からの移民を制限すると断言したが、別にEU諸国と「国交断絶」するわけではない。単に「新たな国際関係を模索しよう」という話にすぎない。
例えば、グローバリズムの段階で言えば、EUから抜けたとしても投資協定やEPA(経済連携協定)をEU諸国と結び直すことで、「資本移動の自由」までは互いに認めるという妥協点はある。あるいは、より段階を引き下げ、「モノの移動の自由化についてはこれまで通りで」でも構わない。
トランプ大統領にしてもメイ首相にしても、無限にバリエーションが存在する「究極の自由主義」と「究極の保護主義」との間の適切なポイントを探っているだけという現実を理解しなければ、極論ばかりが横行することになる。
トランプ大統領に話を戻すが、過去何十年間も自由貿易を標榜し、第2次グローバリズムを主導したアメリカの大統領が「保護主義は大いなる繁栄と強さに結び付く」と、就任演説で宣言した。これは、否定することができない事実だ。空前絶後の「レジーム・チェンジ」と表現しても構わないだろう。