世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第208回 保護主義の時代、来たれり (3/3ページ)
トランプ大統領の演説は、その日のうちに日本語訳され、テレビ、新聞各社が「トランプ演説全文」として報じた。そして最初に全訳を公開したNHKが、この「保護主義は大いなる繁栄と強さに結び付く」の一文を省略したため、筆者は愕然としてしまったわけである。
NHKはトランプ大統領の言葉「We must protect our borders.(われわれは国境を守らなければならない)」を「われわれは国を守らなければならない」と訳し、さらに「Protection will lead to great prosperity and strength」という一文を、丸ごと「全訳」からカットした。他紙がNHKに倣った場合、日本国民はアメリカ新大統領の保護主義宣言を知ることがなかったことになる。
筆者をはじめ、内閣官房参与の藤井聡教授などがNHKの悪質な「報道しない自由」を取り上げ、批判を展開した。結果、NHKは翌日にはborderの訳を「国境」に修正し、同時に「保護主義こそが偉大な繁栄と強さにつながるのです」という一文を追加したのだが、これが日本のマスコミの実態である。
例えば、border(国境)を「国」と訳したことについては、「文脈から、そのように意訳した」と強弁できないこともない。とはいえ、演説文において最も重要な「Protection will lead――」の日本語訳を省いたことについては、これは言い訳が利かない。NHKは、トランプ大統領の保護主義宣言を日本国民に知らせたくなかったのだ。
今後の日本においては、アメリカが「アメリカ国民を守る保護主義」に舵を切ったことを認められず、これまでグローバリズムを信奉していた政治家や官僚、学者、評論家、誰も彼もが言論の混乱に陥ることになるだろう。
保護主義の時代、来たれり――。この現実に対応できない場合、わが国の将来は暗澹たるものにならざるを得ない。
みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。