83歳筆者が観た「SNOWDEN」...便利な世界の裏の恐ろしさ、理不尽さ (3/6ページ)
そのようにして、持ち出した膨大なデータを、敢えて外国の著名な通信社、すなわち英国の『ガーディアン』紙および自国である米国の『ワシントン・ポスト』紙や香港の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙を選び、注意深く連絡を取り合いながら、最終的には本名を明かして世界中に訴える、という挙に出たわけだから、その能力、決断、信念には脱帽せざるを得ない。
ところが、その暴露行為は、それだけに留まらず、更に大きな展開を見せる。
つまり、一時世界中を駆け巡る大ニュースとなった、各国元首や首相、たとえばフランスのオランド大統領やドイツのメルケル首相などの電話盗聴問題である。
ガーディアン紙は、SNOWDENが持ち出した極秘文書により、NSAが日本を含めた38カ国の大使館に対しても盗聴を行っていたことをスクープしている。対象となっている大使館は、日本やフランスやイタリア、ギリシャ、メキシコ、インド、韓国、トルコなどの同盟国も含んでいた。
ワシントンの欧州連合(EU)代表部への情報収集工作のケースでは、暗号機能付きのファクス内に盗聴機と特殊なアンテナが仕組まれ、約90人の職員のパソコン内のデータ全てをのぞき見る手法で実施されていたそうだ。
フランスのオランド大統領は「同盟国に対するこのような行為は容認できない」とし、ドイツ政府報道官は「全く容認できない」とする苦言を呈した。これらの報道に対してオバマ大統領は、一般論として「諜報機関を持つ国ならどの国でもやっていることだ」として、同盟国の大使館に対する諜報活動への理解を求めた、ということだ。
このことに関し、日本では、菅義偉内閣官房長官が「米国内の問題なので、米国内で処理されることだ」「日米間の外交においては、しっかりと秘密は守られるべきだ」とのみ述べた。
2015年7月31日には、内部告発サイト「ウィキリークス」がアメリカのNSAが少なくとも2006年ごろから日本の内閣、日本銀行、財務省などの幹部の盗聴を試みていたとして、米政府の関連文書を公開し、これに対し菅義偉内閣官房長官と安倍晋三内閣総理大臣は「事実であれば極めて遺憾」と述べたが、抗議には至らなかった。