人が動く! 人を動かす! 「田中角栄」侠(おとこ)の処世 最終回 (2/2ページ)
その卓抜な発想と能力への“郷愁”は多としながらも、果たして今の時代に「田中流」が存分に機能したかは疑問が残る。傑出した政治家でも、その時代にピタッとはまるかどうかは分からないのである。古来、歴史上の人物は、常に“時代の要請”の中で生まれている。「地の利」「人の和」に加え、「時を得た」人物だけが、その時々の英雄たることは歴史が証明している。一般社会、また同じ。時を得て初めて「出世」の入り口に立てるということである。
連載終了にあたって、曲折多かった人生を、ただひたすらバク進した田中の遺訓めいた生きる知恵の名言二つを挙げ、田中からの最後の“贈り物”としたい。
諸賢、心しておいて損はないと思われる。
「世の中は嫉妬とソロバン(計算)の渦。そこをどうかき分けられるかどうかだ」
「結局、食って寝て、嫌なことは忘れるのが一番」
〈完〉
次号より筆者による秘録・戦後総理夫人伝『天下の猛妻』の連載が始まります。ご期待ください。第1回は、安倍晋三・昭恵夫人です。
〈参考文献〉
「私の履歴書」(田中角栄・日本経済新聞社)、「私の田中角栄日記」(佐藤昭子・新潮社)、「政治家田中角栄」(早坂茂三、中央公論社)、「早坂茂三の田中角栄回想録」(早坂茂三・小学館)、「角栄のお庭番 朝賀昭」(中澤雄大・講談社)、「角栄と真紀子のヒソヒソ話」(上之郷利昭・潮出版社)、「田中角栄全視点」(自由国民社編集部・自由国民社)、「越山田中角栄」(佐木隆三・朝日新聞社)、「田中角栄は死なず」(蜷川真夫・山手書房)、「ザ・越山会」(新潟日報社・新潟日報事業社)、朝日新聞および新潟日報縮刷版。
尚、本文中の敬称は謝して略させて頂いた。
小林吉弥(こばやしきちや)
早大卒。永田町取材46年余のベテラン政治評論家。24年間に及ぶ田中角栄研究の第一人者。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書、多数。